ビールとしてなによりも肝要なのは、そう、水です。いかに高品質なホップや麦芽を用いたとて、結局は水がそのビールの品質を左右するのです。北海道は小樽、小樽の水はチェコのそれにも似た良質な軟水。それを用いて、地域の特性と確固たるビールへのこだわりをもった、北海道が誇る地ビール。それが小樽ビールなのです。
その歴史は存外に深層へといざなうものであり、食料品に関する法律としては世界最古のものと云われる「ビール純粋令」(1516年~)に基づいたドイツ・スタイルのビールを、小樽ビールではかたくなに守り続けています。
「ビール純粋令」とは、簡単に説明しますと、「ビールにはホップ、麦芽、水、酵母以外は混ぜちゃダメよ」という法なのですが、日本のビール界にはそれを守っている物ばかりではありません(例えば、アサヒ・スーパー・ドライの原料欄をご確認下さい)。それを遵守するというだけでも、小樽ビールの「ビール」というものへのこだわりがうかがい知れるというもの。
それだけではありません。無料で醸造所見学もおこなわれているので、機会があれば一度見ていただきたいのですが、発酵の段階でタンクのフタを開放したままにしています。「発酵の段階で、小樽ビール独特の口当たりが出来る」とされるその工程には、他にもいくつもの独自の「技」が仕込まれています。
また、他のビールと小樽ビールの何が違うのか? その最たる点は小樽ビールでは酵母を取り除いていない、という所でしょう。酵母を残すことにより栄養素やコクは増し、炭酸ガスが抜けにくくなるのです。
ただしそのデメリットとして、長時間の輸送が酵母にダメージを与えるため、北海道へ行かないと小樽ビールは飲めないというのがあります(一部例外の商品もあります)。とはいえ、新千歳空港などでも販売はしていますし、手に入れるのにそれだけの手間を掛ける価値があるビールであることには、異存はないでしょう。