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『ゲゲゲの家計簿』
戦争を知らずに僕らは育った、から・・・

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世にもめずらしい、家計簿をベースにした漫画『ゲゲゲの家計簿』は、『ゲゲゲの鬼太郎』でおなじみの漫画家、水木しげるが、2011年から2012年にかけて連載していた自伝的作品です。

事の発端は、水木プロダクションの資料整理です。そもそも「水木しげる」というペンネームは、彼が経営していたアパート「水木荘」から付けられたものですが、当時、水木は、「ゲゲゲの女房」である現在の妻とは出会ってもいない、未婚の状態。ゆえに、帳簿(家計簿)をつけていたそうです。資料整理の際、当時の家計簿が発見され、そこから当時の様子が描かれることとなりました。

内容としては、『ゲゲゲの女房』を、夫の視点から補完、再構築した漫画と言えるでしょう。水木が婚前、太平洋戦争(大東亜戦争)で徴兵され、ラバウルへ赴き、爆撃で左腕を失ったのは有名な話ですが、この漫画の中では、生涯一度だけ、水木が義手を付けた時のエピソードが描かれています。それが結婚式の当日。

私は戦後の生まれですし、今や多くの人は、戦争をニュースでしか知りません。戦争を語る老人は何人かいますが、彼らのほとんどは、戦禍に遭った人たちであって、戦争に行ったわけではありません。そういう意味で、文字通り生身で戦争を体験した水木の語り口は、唯一無二と言えるでしょう。反戦イデオロギーに満ちているわけでもなく、淡々と壮絶な人生を歩んでゆく有り様は、戦争を生活という角度から捉えているようにも受け取れます。

個人的に発見だったのは、おカネの流れが人生を浮き彫りにする、ということでした。日記(ブログ)を付ける人は、よく当時の思い出をそこから汲み取りますが、家計簿はそれのみならず、当時の生活と社会の繋がりをも、浮かべてしまうのです。水木は作中で、三億円事件(1968年)との関わりなどにも触れていました。マイナスに語られることが多いおカネですが、人々と社会の大切な架け橋としての役目も、確かにあるわけです。


作品情報

・作者:水木しげる
・出版:小学館
・連載期間: 2011年~2012年






 

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