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『落第忍者乱太郎』
戦国の世の忍びをリアルに現代に伝えるギャグ漫画

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「己を知る」ということは、己の歴史を知ることに他ならない。日本人とは何かを問うならば、まずは日本の歴史を学ぶことが肝要である。だが、過去は記憶の中にしかなく、得てしてあやふやで不確かなもの。それは歴史も同じだ。歴史など人の集合体の過去なのだから。歴史を知るには、可能な限り「整合性と信憑性がある、正しい資料」を求めねばならない。史実は史実としてあれども、人が刻み紡いできたものなら、そこに意識的・無意識に、を問わず真偽混ざり合うことは、想像に難くないだろう。


海外の人が抱く、日本を代表するパブリック・イメージ「ニンジャ(忍者)」もまた然りだ。昭和・平成を通して、忍者を主人公にしたアクション漫画などが盛んであるためか、あるいは秘密というベールに包まれている職種という神秘性がそうさせるのか、忍者がまるでアクション・ヒーローであるかのように思われている向きが、多分に見受けられるのだ。

だが、人が水面を歩いたり、煙と共に消えたり、まして城郭の屋根から屋根へ飛び移ったりなど、現実に出来るはずがない。それはオリンピックの日本代表選手の身体能力などからも、容易に推察できるだろう。

「人間離れした術を駆使する人=忍者」のイメージを根底からくつがえし、リアルな忍びの者の姿をコミカル・タッチで教えてくれるのが、朝日小学生新聞に1986年より連載されている『落第忍者乱太郎』だ。

舞台は室町時代後期。主人公たちは、忍者養成機関である「忍術学園」に通い、日夜忍者になるべく鍛錬を重ねてゆく。こう書くと、体育会系の話を思わせるが、あくまで子供向けのギャグ漫画のため、いい意味でユルさが心地好い漫画である。主人公たちは10歳だ。


しかし、子供向け漫画とあなどれないのが、その時代考証と取材の確かさ。日本で流れる時代劇・忍者アクション漫画など、いかにいいかげんなものが多いかという問題を浮き彫りにするほど、リアルに当時の風俗が描かれている。しかもギャグ漫画なので、微妙なバランスで、絶妙に、だ。

たとえば作中序盤にて、こう語られる話がある。忍者の主眼は諜報活動であり、逃げる・隠れるがメインだから、敵と戦うなど、よほどのことがない限り避けるべきだし、手裏剣など何枚も持ち歩かないのが普通だ。かさばるし、重いし、と。

日本の歴史を知る上でも、大変に分かりやすく楽しい漫画として重宝することは間違いない。勿論、それは冒頭で述べたように、日本人を知ることにもつながっている。



作品情報

・作者:尼子騒兵衛
・出版:朝日新聞出版
・連載期間:1986年1月~現在連載中








 

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