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『あしたのジョー』
三島由紀夫も愛読した、ボクシング漫画の決定版

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1970年前後の日本。日本が一丸となって、世界に通用するような「ジャパン・ブランド」の礎を築いた、日本の現代を考える上でも重要視される時代。そんな当時の人々の熱量を漫画として表現したのが、ボクシング漫画の金字塔『あしたのジョー』だ。

幼い頃より施設で育った主人公・矢吹ジョーは、施設をたびたび脱走し荒れた生活を送っていた。ある日の東京の一角で、その日暮らしに落ちぶれていた元ボクサー・丹下段平とジョーはケンカになるが、そこで丹下はジョーに拳闘の才能を見出し、ボクシングの世界へいざなう。程なくして、ジョーは少年院へ送り込まれてしまうが、それはジョーのボクサーとしての人生の始まりを意味していた・・・という話である。


1967年12月に始まった、この漫画。当時の日本全体が抱えていた熱量を的確に表していたせいか、とにかく熱狂的な支持を受けたものである。作中でジョーのライバル・力石が死んだ時には実際に葬儀が執り行われたり、1970年に起きた日本初のハイジャック事件(「よど号ハイジャック事件」として有名)では、犯人たちが「われわれは明日のジョーである」(原文まま)という声明を発表したり、実際の社会における影響力は凄まじかったのである。

また、ボクシング観戦を趣味にしていた作家・三島由紀夫は、当時『あしたのジョー』が連載されていた週刊少年マガジンを、『あしたのジョー』を読みたいがために出版元である講談社を直に訪れて求めたというエピソードも残っている。

当時の熱量を漫画で表現している、という反面、内容が現実的ではないと見る向きもある。しかし、ドキュメンタリーならいざしらず、いったい漫画で「現実的」に徹する必要性がどこにあるのか? しばしば「漫画の真似をしてケガするなんて馬鹿だ」と云われるが、そういうことなのだ。漫画は写実的にあることより、その内容が魅力的であることが求められるのだから。

作中で描かれるジョーたちの人生は魅力的だ。燃え尽きても構わないと思えるほど、熱量を注げる何かがある素晴らしさを彼らは体現している。その精神性は、ともすれば、今の日本人の多くには持ち合わせていないものかも知れない。だがしかし、なればこそ、当時の時代性と精神を感じ取る上で、この作品は極めて有用なのである。


作品情報

・原作:高森朝雄(梶原一騎)
・作画:ちばてつや
・出版:講談社
・連載期間:1967年12月~1973年5月







 

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