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『サザエさん』
カツオにならう、世間の波を上手く泳ぎきる処世術

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日本初の女性プロ漫画家・長谷川町子が『サザエさん』を福岡県の地方新聞紙上に連載し始めたのは、ポツダム宣言受諾から間もない1946年4月のことだった。


『サザエさん』は、福岡に住む20代の女性「磯野サザエ」を中心とする家族コメディであり、戦後の民衆から好評を博し1974年まで連載が続けられた、今日では日本を代表する漫画のひとつである。

もっとも、磯野サザエ(結婚後はフグ田姓)が主役であったのは作品途中までと言っていい。中盤以降、作品の中心に位置していたのはおおよそ彼女の弟・磯野カツオ(初期はカツヲ表記)だ。丸刈り頭の11歳の少年であり、彼が率先して物語を展開する様相が、中期以降はとにかく顕著であった。

サザエとは16歳も歳がかけ離れてはいるものの、カツオは、サザエや2人の父である磯野波平も舌を巻くほどの「世渡り」の上手さを持っている。それは、悪く言うと「ずる賢い」ということなのだが、彼の個性が『サザエさん』という漫画の重要な隠し味であることは、おそらく読者のいずれも否めないだろう。


概して、社会で生き抜くのに求められるものは、「要領のよさ」である。人格など二の次とまでは言わないが、要領よく立ち回り「誰からも憎まれない」ことが、どの組織なり共同体なりにおいても肝心だ。だが、そういった風潮に馴染めない人がいるのもまた事実。そこで、現実社会に適応しうまく立ち回ってゆける、そのコツをカツオから楽しく学び取れるのが、この作品のミソだ。

とにかく、カツオはまず「嫌われない」。何を言ってもほとんど家族から信用されないオオカミ少年なのだが、彼は嫌われない。それは、実際に漫画を読んでみればわかる。読者でも、カツオのキャラクターを心底憎む人はいないだろう。

カツオは、昭和の読者たち、そして作者である長谷川からも愛された。だからこそ、彼の出番は序盤とは比べ物にならないほど増えていった、まさに漫画のキャラクターとしての出世頭である。

彼の父・波平をして「わしより世渡りが上手い」と言わしめた彼の魅力の真髄は、読むたびに新しく発見されるから面白い。


作品情報

・作者:長谷川町子
・出版:姉妹社・朝日新聞社
・連載期間:1946年4月~1974年2月







 

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