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■ 8月31日~9月29日にかけて、「2016年のポップス」を(今頃)取り扱います







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『坊つちゃん』
夏目漱石の異端にしてエヴァーグリーンたる学園活劇

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近代日本文学の雄・夏目漱石。もはや「夏目漱石が好き」というと、「お金が好き」と解釈され得る時代も過ぎたものの、彼の小説はまだまだ過去の遺物にも俗物にもならない、エヴァーグリーンな面白さをたたえている。


「坊っちゃん」
新潮文庫版
その立て役者たる長編小説が、『坊つちゃん』だ。良くも悪くも重たい作風が多い漱石作品の中で、内容という面でも文章という面でも、軽快で親しみやすい『坊つちゃん』は、明らかな異端として際立った存在感を持つ。しかし今日に至るまで、その異端であるはずの『坊つちゃん』は、彼の代表作として多くの人に親しまれてきた。映像化された回数も4回と、彼の作品の中では断トツだ。

内容は、血気盛んな若手教師が赴任先であれやこれやを経験して、その無鉄砲ぶりと融通の利かなさからどんどん行き場を失っていく、という物語なのだが、そこに関しての評価は読み手に委ねられてしかるべきだろう。彼の無骨な気質こそが本来の日本人を表しているととらえても、空気を読まない自己中心的な人物ととらえても、それは読者の裁量次第だ。

ただ、優れた大衆作品というのは常にそうなのだが、ユーモアとペーソスの巧妙な配分によってこそ成立する。なぜ主題が「坊つちゃん」たりえるのか。もっとも、この小説の本領は内容のみにあらず、だ。

先に「(本作は)文章という面でも、軽快で親しみやすい」と記したが、この作品の真骨頂は、実はその文章にある。回りくどくない、ストレートでテンポの良い文章。それが主人公の気質とマッチしていて、読者とフィクションの主人公の解離性をごくミニマムなものに抑えている。

最近の作品でいうと『鹿男あをによし』(著:万城目学)のルーツと思ってもらえば、取っ付きやすいかも知れない。


作品情報

・作者:夏目漱石
・出版:合資会社ホトトギス社(1906年)

・『坊つちゃん』(夏目漱石.com)







 

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