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『帰天城の謎 ~トリック青春版~』
はやみねかおるの手による、「トリック」の青春時代

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人気小説や漫画を原作とした日本のテレビドラマや映画が増えて久しい昨今。脚本家・演出家の空洞化を嘆く人もいれば、高品質な小説や漫画がひと頃より増加している証拠だと楽観する人もいますが、それはそれとして、逆にドラマが人気を博し小説化・漫画化される事例数は、反比例しているのではないでしょうか。まして、そのドラマの過去を語りなおかつドラマのファンから賛辞を得るほどのクオリティをたたえた小説など、です。


『帰天城の謎 ~トリック青春版~』
講談社
定価:税込1050円
ところがどっこい。そんな現代では珍奇とも言える例があるのです。2000年・夏、深夜ドラマとして全10回が放送され、たちまち好評を博し、続編が作られたり、ゲーム化されたり、スピンオフ作品が作られたり、映画化されたりしたミステリー・サスペンス・ギャグ・ドラマ「トリック」。その主人公たる山田奈緒子と上田次郎。2人の過去を描いた『帰天城の謎 ~トリック青春版~』は、その珍奇な小説に相当します。

まず、あらためて「トリック」の概要をご説明いたしましょう。売れないどころかてんでダメな若手貧乳マジシャン・山田奈緒子は、ひょんなことから物理学助教授(当時)という権威を鼻にかけるノッポ男・上田次郎と出会います。そして、トリックを使って人々をたぶらかす悪徳集団に対し、持ち前の奇術の知識やその他諸々を駆使して数々の勝負を挑んでいきます。

物語のスタート地点において、両者はすでに成人していました。つまり2人が大人になってからのドラマだったわけです。しかし、『帰天城の謎 ~トリック青春版~』で描かれるのは、山田奈緒子が中学生の頃の話です。いったいこの凸凹コンビは、青春時代、いかなる接点を持っていたのでしょうか。

原作たるドラマへのトリビュートを充分に備えつつ、著者・はやみねかおるのテイストも加味され、従前の「トリック」ワールドの新たな可能性を示唆した物語。もともと珍奇かつユニークな味わいが特色だった「トリック」ですが、そのカラーも存分に継承されています。

もちろん、ミステリーも楽しめますよ。


作品情報

・題名:帰天城の謎 ~トリック青春版~
・著者:はやみねかおる
・画家:鶴田謙二
・出版:講談社(2010年)
・ISBN:978-4-06-216231-9







 

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