日本語 | English

■ 2月29日から3月30日にかけて、文房具をフィーチャーいたします。







Atom_feed
『三毛猫ホームズの推理』
三毛猫「ホームズ」ってメスなんです、知っていました?

LINEで送る

1978年より継続的に作品が発表され続けて、今年堂々と35周年を迎えるシリーズが推理小説の世界に存在する。それが、著作累計発行部数3億部突破と前人未到の記録を打ち立てた日本の小説家・赤川次郎の『三毛猫ホームズ』シリーズである。

警視庁捜査一課の三十路目前とっちゃんぼーや刑事・片山義太郎とその飼い猫「ホームズ」、そしてその周囲の家族・仕事仲間が次々と繰り広げられる難事件に挑むというのが、このシリーズ。これまでに49作もの長編が発表されてきたが、中でも外せないのは、やはりシリーズである以上最初の作品。すなわち、『三毛猫ホームズの推理』(1978)となる。


『三毛猫ホームズの推理』
光文社文庫
理由は在る。「小学生にもオススメ」だとか「旅先で気軽に読める」などのベタなフレーズが常套句として成立するほど、その読み易さが売りである赤川作品群にあって、この作品は異色。つまり、ここに内包されているミステリーは、ディープなミステリー・ファンも納得せざるを得ないほどのクオリティを誇っているわけだ。

事件を解決へと導くかのような奇妙な行動をとるメスの三毛猫「ホームズ」。けれど最初から彼女は片山に飼われていたのではない。『三毛猫ホームズの推理』では彼らの出会い、その契機となった事件が描かれる。

「最初はシリーズ化を考えてなかった」と云われるだけあり、純粋に推理小説の一作としての濃厚な味わい、強烈なストーリー展開など、今も変わらず読む者に推理の楽しさを教えてくれる、良質な推理小説のひとつである。

作者・赤川次郎は、自身の作品で死んだキャラクターのお墓を実際に作っていることでも有名だ。ちゃんとお墓参りもするのだという。そうすると一体このシリーズだけで何個の陵墓が存在するのだろう。時期が時期、赤川の精神を見習い、我々もちゃんとお墓参りをしたいもの。その折、『三毛猫ホームズの推理』を読むも一興ではないか。


作品情報

・作者:赤川次郎
・出版:光文社カッパノベルス(1978年)







 

『女たちは二度遊ぶ』
吉田修一が描く、印象に残る十一人の「美しい」女たち

『雪国』
川端康成が描く、日本人の自然哲学