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『みんな楽しそう』
一青窈の半生が織り成す、哀しくも愛しい「心の詩」

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十年ほど前だったでしょうか。付き合いのあった、当時女子高生だった女性がいました。彼女は両親とも日本人でしたが、親御さんのお仕事の都合で海外諸国を渡り歩いて来た、という人生を送って来ていました。英語を始めとする外国語も堪能で、よく彼女の部屋で英語を教えてもらったものですが、楽しかった思い出です。

そんなある日、彼女がベタ褒めして推して来るアーティストがいました。「彼女の歌を聴いて、日本語の美しさが分かった」と、その女性は何かに開眼したように興奮して推して来たものです。それが歌手・一青窈でした。


『みんな楽しそう』
著・一青窈
定価:税込1470円
一青窈は二〇〇二年のデビュー作『もらい泣き』で既に世に広く知られており、確かに、ユニークというかどこかシュールとも言うべき日本語を使った歌詞が特徴的でした。さて、そんな独特な日本語詞を書く一青窈が今年、自身初となる詩集を刊行しました。それが『みんな楽しそう』です。

なんでも歌詞とは別に彼女が書き溜めていた「詩」を編纂し、出版のはこびとなったそうですが、そこには自然と彼女の半生が、時に赤裸々に、時に隠微に刻まれています。一人の女性、一人の少女の心の声が、穏やかにですが激しく、聞こえて来るようです。愛しくも哀しく。

一青窈が駆使する日本語と同じくらい独特な表紙は、彼女が幼少の頃に書いた絵です。つまりこの詩集には「一青窈」の精神が、その言葉から装丁にいたる隅々まで息づいているのです。そして読み手が自身の心に起きた作用に気付く時、彼女は哀しくも愛しく、無垢なままで、そこに佇んでいてくれることでしょう。

ちなみに、冒頭で記した件の女性は、ほどなくしてメルボルンの大学へ進学。ご家族ともども移住して行きました。それから私も何度か引っ越しをしたので、もう連絡を取り合うことも出来ませんが、もし元気でいるのなら、この詩集・『みんな楽しそう』を読んでもらいたいな、と思います。どんな国に居ても、果てない距離を隔てても、きっと日本語の美しさを再認識してもらえるでしょうから。


作品情報

・作者:一青窈
・発行:ナナロク社(2013)
・作者公式サイト:一青窈オフィシャルサイト







 

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