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『ぼくらは海へ』
那須正幹は「ズッコケ三人組」だけじゃない!

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『ぼくらは海へ』は、作家、那須正幹が1980年に上梓した児童小説です。那須正幹って誰? という人もいるかもしれませんが、児童文学の金字塔とされる「ズッコケ三人組」シリーズの作者です。

誤解しないで下さい。児童小説だから大人が読むのには適さない、子供向けの本だろう、と思われるのは大間違いです。確かに本来のターゲットは子供です。しかし質の良い児童文学とは、おうおうにして大人から子供まで楽しめるものなのです。大人だって昔は子供だったのですから。

最近特に思うのですが、大人向けの本に耽溺している大人の方が、子供っぽい人間が多い気がするのです。根拠もないままに大人と子供を線引きし、自らが特権階級にいるかのように錯覚している「大人」ほど、子供っぽいものはありません。このへんは心理学の研究の対象になるかもしれませんね。


子供らしい子供なんて幻想に過ぎません。子供だって大人を平気で裏切ります。子供は大人の思惑の中で生きているわけではなくて、ちゃんと現実の世界をサバイバルしているのです。「子供は駆け引きが無いから愛おしい」とか「子供らしくてかわいい」なんて言い分は、子供を一人の人間として見ていないのではないか。実は、子供と大人の違いなんて本当に僅かなものでしかないんですよ。

そのあたりを十全に理解していることが、児童文学に身を置く者の条件であり、マナーです。那須の「ズッコケ三人組」シリーズが、なぜ累計2000万部を超えるほど全国の子供たちに親しまれ続けたのか? 子供に媚びず、子供だからと手を抜かず、全力を投じて子供たちと向き合ってきたからにほかなりません。『ぼくらは海へ』だって、その例に漏れず。

主役となる「ぼくら」は小学六年生。ただし、あきらかに彼らの中には格差があり、個人差があり、葛藤があります。彼らはとある動機から造船を試みますが・・・。

これを読んだ大人のあなたは、お子さんや身近な子供たちではなく、ご自身の子供の頃をきっと思い出すと思います。ただしノスタルジーからではなくて、何処かで掛けてきたはずの心の鍵が、ふいにはずれてのことです。その仕掛けは、ここでは言及しません。じかに確かめて頂きたいと思います。


作品情報

・著者: 那須正幹
・発行: 偕成社(1980年)







 

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