日本語 | English

■ 4月30日~6月29日にかけて、「日本のジャズ」を取り扱います







Atom_feed
『百姓貴族』
生命を管理する者は、消費する者に問いかける

LINEで送る

『百姓貴族』は荒川弘(『鋼の錬金術師』などで有名な漫画家)が、2006年より連載しているエッセイ漫画です。作者自身、北海道十勝の農家の生まれで、高校を卒業してからマンガ家になるまでの7年間、農業に従事していたといいます。その経験を活かして、ユーモアとシリアスを交え、農家の実態をズバリ描いているわけです。


上記のような内容からか、農業経験者に共感してもらえる、いわゆるあるある漫画か、農家の生活に憧れている人の慰みかと捉えられがちです。しかしこの漫画はそんな平易なテーマを描いているわけではありません。

むしろ、都会育ちの人が田舎暮しに憧れたり、サラリーマン一家で育った人が農業に興味を持って大学は農学部を受けたり、なんていう話がよくありますが、そんな安易な発想にクギをさすかのような、徹底したリアリズムが肝でしょう。

農家も一般消費者もそうですが、生命を消費して生きています。生産者は牛や豚や野菜を育て、我々はそれらの一部を、小売店を介して手に入れ、食べます。この構造の欠点、それはエンドユーザーには生命の実態が伝わらない、ということです。何かを殺して、今日も明日も生きていく。この実像が無いままに、大半の人は生活できてしまっているのです。

しかし、当然ながら生産者は違います。ちゃんと生命と向き合い、管理する。そうした大事なステージに立っているのは、紛れもなく彼らであり、『百姓貴族』の主人公たちなのです。そこには生命と向き合わない一般消費者との、価値観の相違が生まれます。平たく言うと、一般消費者には「ありえねー」ことが、生産者には常識なのです。この漫画は、そんな深い溝を越えてでも農業に従事したいと言うのかと、先述の安易な憧れを持つ人々に問いかけるのです。でも重すぎないユーモアもちゃんとあるから、そこがまた面白いのですが。

余談ですが、この荒川弘という人、女性だったんですね。初めて知りました。


作品情報

・作者: 荒川弘
・出版: 新書館
・連載期間: 2006年~連載中







 

『ツレがうつになりまして。』
社会人になる前に読むべきエッセイ漫画

『ぼくの体はツーアウト』
カネを使って健康になるのはナンセンス?