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『小説 君の名は。』
新海誠による、切なさのアップデート

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興行収入100億円突破ですよ、いやはや、すごいもんです。新海誠監督によるアニメーション映画『君の名は。』が、ここまでのヒットを記録するとは思いませんでした。予告編を見た時は、正直「このテの切なさに酔うだけの映画は、もういいんじゃないの」なんて考えていましたから・・・。多分ですが、新海監督ご自身も、この大ヒットは予想してなかったでしょう。面識はありませんが。

で、何がこんなにウケたんだろうかと、足りない頭を使って考えてみました。評論や分析は苦手なのですが、辿り着いた結論は、「昔ながらの切なさの系譜をちゃんと汲み取り、物語に落とし込み、2016年の現代を通す形で提示してみせたから」です。


『君の名は。』は、まぎれもなく2016年、今の物語です。連絡を取り合うのはスマホでLINEを使いますし、土管が転がる空き地や、廊下に生徒を立たせる先生みたいな、時代錯誤なシチュエーションは出てきません。また、作中では隕石の衝突があったとされますが、それが先の大震災を意味しているであろうことは、想像に難くないでしょう。

「昔ながらの切なさの系譜」と上述しましたが、『君の名は。』から伝わりくる切なさは、戦後のSF青春物語の世界で言えば、『時をかける少女』の系譜に、もっとさかのぼれば、万葉の世界にもルーツを見出させるはずです。こう言うと情緒に欠けるのかもしれませんが、人が感じる切なさにはパターンがありますし、物語にしたって、そのパターンは31しかないと言われています。つまり決して目新しい物語ではないのです。

問題はそのパターンにどう肉付けするかであり、ここがオリジナリティの在処になります。人間は文化や時代とは切り離されて存在し得ません。『時かけ』も『万葉集』も、名作ではありますが、作中の時代や文化が私たちとかけ離れてしまっているため、残念ながら今を生きる私たちには響きにくい。では、それらに内在する切なさを今に正しく伝えるためにアレンジして生み出されたものとは? それが『君の名は。』なのだと思います。

なんか出来そこないの映画評論になってしまいましたが、小説版は基本的には映画と同じですから、これでいいのです。まぁ書き手が本職の小説家ではないので、文章自体は読みにくい所がありますが、そこはご愛嬌でしょうか。ゴースト・ライターを使ったにしては、下手すぎる文章ですしねぇ。


作品情報

・作者: 新海 誠
・発行: 角川文庫(2016年)







 

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