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■ 4月30日~6月29日にかけて、「日本のジャズ」を取り扱います







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『まんが道』
戦後の日本のマンガ史を、伝える

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正直、このマンガは、エッセイまんがとして取り上げるべきか否か、迷いました。マンガ家、藤子不二雄Ⓐが、1970年から断続的に描き、2013年に完結させた『まんが道』のことです。

もちろん、エッセイとしての要素はじゅうぶんにあります。作者をして「ほぼ自叙伝」と語られる通り、漫画家を目指す男子2人が出会うところから、物語は始まります。言うに及ばず、藤子不二雄Ⓐと彼の元相棒、藤子・F・不二雄がモデルとなっています。2人は、当時すでに漫画界の巨匠と目されていた、手塚治虫のもとを訪れ、プロのマンガ家へと邁進してゆく、これがプロットですから、エッセイでもおかしくはありません。

では、エッセイと言い切れない要素は、というと、作中の主人公やいくつかのキャラクターが実名ではない点です。つまり「藤子不二雄」を、ちゃんと認識した上で読めば、エッセイなのですが、全く何も予備知識なしで手に取ると、マンガ家を目指す青少年たちの物語(フィクション)とも受け取れるわけで、もちろん、そこが藤子不二雄Ⓐの狙いなのだろうとは思われますが、なんとも扱いがややこしいな、と思いました。

とまれ、この作品は、確かに自叙伝的要素を多分に含んだ、いわばエッセイであるとして、それはつまり、『まんが道』には戦中・戦後のマンガ史がそのまま凝縮されているということです。(藤子不二雄Ⓐは1934年生まれ)手塚治虫の作家としての凄さ、当時のマンガ家にはアシスタント制度がなかったなど、日本において、マンガが文化として発展する過程が、リアルに刻まれています。

中でも、トキワ荘(手塚治虫、藤子不二雄、赤塚不二夫などが暮らしていた、木造アパート)のくだりは、現代の日本人にこそ、響くのではないでしょうか。ビジネス的に確立されたプロダクションではなく、同じ志を持つ若者が集い、育ってゆく。SNSが、今の世ではそれに代わるのでしょうか。しかしそんな場所が、偶発的に「実在」することが、大切にも思えます。

結論といたしましては、全国の図書館の司書の皆さん、今すぐ『まんが道』をそろえて、「近代文化史」のコーナーにおいてください、です。


作品情報

・作者:藤子不二雄Ⓐ
・出版:小学館、他
・連載期間: 1970年~2013年






 

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