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『日本以外全部沈没』
毒入り危険!なブラック・コメディ

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『時をかける少女』などの作者として有名な、日本のSF作家御三家の1人、筒井康隆。大阪出身であるせいか、彼の作品にはひどくナンセンスなコメディが多い。おそらく読者は爆笑するか、気分を害して読むのをやめてしまうか、そのふたつに大別されてしまうだろう。少なくとも(精神的な意味での)子供が楽しめる笑いは、彼の作品に求めてはなるまい。


1973年、小松左京の『日本沈没』のパロディとして筒井が発表した短篇小説『日本以外全部沈没』も、その類のひとつとしてあてハマるだろう。

日本以外の諸外国が、天変地異のせいで海に沈没してしまう。チベットやアンデスのような高山地域は沈没をまぬがれたものの、治安が悪すぎて住めたものではない。世界中の著名人が、生き残りのために、必死に日本語を覚えて日本に移住しようとする。ところがこの日本の浅ましさときたら・・・カンタンにいうと、こういうお話である。

短篇である。そもそも、このパロディを作るきっかけになったのは、上述した『日本沈没』がヒットした、その祝賀会で某作家が「日本以外全部沈没」なるタイトルだけを思いつき、筒井がそれを受け、話をスラスラ書き上げたという、修学旅行中の高校生みたいなノリだった。よって、長編ではないし、ましてや名作ではない。

名作ではないが、そこは何といっても筒井である。国際社会への、そして日本という国家への毒をふんだんに盛り込み、ひとつの秀逸な笑劇を形成している。もともと、シュールなものを表現するのに最適だから、という理由でSFというジャンルを選んだ筒井である。真面目に正面から読むのではなく、斜め45度から構えて読むと、その笑いの渦に近づけると思うのだが、どうだろうか。


作品情報

・作者: 筒井康隆
・発行: 文藝春秋(1973年)







 

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