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■ 2月28日~3月30日にかけて、「日本の伝記」を取り扱います







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『新幹線をつくった男』
すべてのエンジニア野郎に捧ぐ、技術者の物語

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先生(以下:S):というわけで、アシスタント=Aと、今回は新幹線と蒸気機関車D51の設計、実現にたずさわった技術者である島秀雄の伝記『新幹線をつくった男』(著・高橋団吉)について、いってみよう。

A:2014年の『ナイアガラ・カレンダー』以来ですね、先生。

S:お互い無事で何よりだよ(棒読み)。まぁそれはともかく、これは文字通り、新幹線を日本に定着させた男の伝記。言ってみれば男のロマンってやつが感じられる物語なんだよ。沖縄とか四国の人には「はぁ? 新幹線? 何それ」ってカンジかもしれないけど、日本の長距離輸送、ひいては経済成長の歴史を語る上で欠かせないストーリーではある。

A:クルマ社会のアメリカでは、長距離移動はもっぱらクルマで、長距離鉄道なんかなかなか無いですからね、先生。


S:アムトラックとかあるけど、ひどい時には十数時間の遅れが出るとかで、ワシントンDCやニューヨーク以外では利用率も低いからなぁ。でもあそこらへんを走る「アセラ・エクスプレス」はカッコいいよねぇ。

A:島秀雄の話に戻って下さい、先生。

S:話を振ったのはキミじゃないか。まぁ実際、島秀雄が新幹線を提唱した時代には、「これからは高速道路の時代、つまり輸送のメインは自動車となる時代だ」と思われていて、国鉄(当時)内部からの反発も凄かったらしい。「時代に逆行している、馬鹿げている」って。

A:このサイトみたいですね、先生。

S:ケンカを売らないでくれたまえ。まぁそういう偏見は、当時の世間にもあって、「戦艦大和と並ぶバカ事業だ」と揶揄されていたらしいのね。でもそれを振り切って、世界銀行から資金調達して新幹線を実現させた。この世界銀行の極東担当者に資金を出させようとする交渉が、これまた見事なんだ。

A:どんな交渉ですか、先生。

S:今はどうか知らないけど、世銀は新しい技術には出資しない方針だったらしい。で、島は世銀にこう言った。「自分たちのやろうとしていることは、今までの技術の寄せ集めです。何も新しいことはありません。したがって危険性はありません」と。多少詐術があるような気もするけど、1964年に開業して以来、未だに大事故はないんだから、本当だったと誰もが認めざるを得ない。

A:島さんの爪の垢を煎じて飲んでください、先生。

S:食中毒にしかならないね。まぁのちになって世銀の担当者がこう言ったらしい。「今まで融資して一番うまくいった例は、日本の新幹線だ」とね。島の父親は鉄道省所属で、戦前に計画されていた「弾丸列車」にたずさわっていたんだと。その遺志を島が継いで新幹線開業にこぎつけた。すべてのエンジニア野郎の心の琴線に触れるロマンが、ここにあるんだよ。

A:じゃ、これからの国内出張は全部新幹線ですね、先生。

S:何を言う、早見優。あ、確か彼女、無断で線路に立ち入ったとかで書類送検されたんだっけか。

A:オチはそこですか、先生。


作品情報

・著者: 高橋団吉
・発行: 小学館(2000年)







 

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