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『旅の途中』
スピッツのスタンスを知る

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先生(以下:S):というわけで、アシスタント=Aと、今回は『旅の途中』について。

A:10年前に上梓された、スピッツの伝記ですか、先生。

S:ああ。スピッツというバンドが結成された頃から2007年頃までのエピソードを、スピッツのメンバーがそれぞれ語る形式でね。著者がスピッツとなってはいるけど、まさか本人たちが書いたと思うほど純粋な人はいない(笑)。「聞き書き」と言って、編集者がインタビューして、それをゴーストライターとして文章にまとめたやり方だろう。

A:読んでいかがでした、先生?


S:別に‥よくあるバンド・ストーリーだよねってカンジ。強いて揚げれば、メンバーみなさん、モラトリアム中年っぽいなぁと思った。大人になる儀式を通過せずに歳だけ重ねたような。ただ、全体を通して、スピッツの姿勢は不変なのは分かる。

A:どんな姿勢ですか、先生?

S:ファンだとかオーディエンスだとかのことは一切頭にないという姿勢(笑)。それはこの本が出たタイミングからも分かる。彼らのメジャー・デビューは1991年。この本が出たのは2007年。実にメジャー16年目に出ているんだ。

A:中途半端ですね、先生。

S:だけど本を読むと、現在のメンバーでスピッツが結成されたのは1987年だと分かる。つまり結成20周年のアニヴァーサリー本なんだね。でもさぁ、一般の人には分かり辛いでしょ、そんなの。一般の人に分かってほしいと願う姿勢があれば、こんなタイミングでは上梓しない。だから彼らの姿勢は、自分たち大好きで、リスナーだとかは二の次なのよ。それはスピッツのリーダーの田村くんのパートでよく分かる。

A:あのベース持って暴れ回る人ですか、先生。

S:うん。どこかのラジオのDJさんが「スピッツはメジャー・デビュー〇周年で‥」と言ったらしくて、それを田村くんが「お、この人、分かってんなぁ」と評するパートがある。何様だよって話でしょ(笑)。ラジオ局とバンド屋なんて、ある種のパートナーなわけだから、そこは「正確なアナウンス、ありがとうございます」でしょ、大人の口跡としては。それがこの人たちのスタンス。だけどこの本で納得したよ、なんでスピッツのライヴのクオリティってあんな低かったのか。

A:行ったんですか、先生?

S:身銭切って行かなきゃディスれないよ(笑)。2014年に大阪城ホールのスタンド席で鑑賞したんだけど、終始ヴォーカルの声が聴こえないの(笑)。その時の連れも同じこと言っていたから、これは確か。金返せって思ったよ。なんで歌モノのライヴに来て、歌が聴こえねーんだと。

A:ご愁傷様です、先生。

S:でもその謎が『旅の途中』で解けた。そうか、こいつらは自分たちが楽しめればそれで良くて、客なんかどうでもいいという意向なんだなと。だから、スピッツがどんなスタンスで運営されているかがよく分かる、その意味で価値はある本だと思う。




A:『三日月ロック』はホメてたのに‥(笑)。

S:スピッツの音楽に価値はあると今でも思う。でも彼らのスタンスやライヴの質は、まったく評価に値しない。それだけのことだよ。


作品情報

・著者: スピッツ
・発行: 幻冬舎(2007年)







 

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