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■ 8月31日~9月29日にかけて、「2016年のポップス」を(今頃)取り扱います







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『センセイの鞄』
大人が嗜む、スロウなラヴ・ストーリー

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ラヴ・ストーリー。人が生活する上で誰しも、というわけではないが、そこかしこに恋物語が転がるのを肌で感じるのは、異論を挟まれはしまい。

そして人が成長するのと同様に、恋物語も年齢によって内容が変わってくる。10代がハマりがちな、フルスロットルな急展開の恋は、加齢と共に縁遠くなる。誤解をおそれずにいえば、大人が嗜む恋愛は、簡単に成就もしないし急速的な破綻もしない。穏やかに、男女2人を彩るものなのだ。

『センセイの鞄』
別に酔い痴れて恋愛論を説いているわけではない。そんな男女の恋物語のひとつが、今回紹介する『センセイの鞄(かばん)』なのだ。

概要は、40歳を目前にした女性と、70代になっても常に正装で黒いカバンを携える彼女の高校時代の国語の「センセイ」との関係を軸にした恋物語であるが、ここで「なんだ、教師と教え子系の話か」と早合点して見限ってはもったいない。大人同士の恋愛ではあるものの、なかなかに純朴で味わい深い内容になっている。ギラついた感じのエロティック・サスペンスでもなければ、ありがちな背徳を売りにしたドロドロの話でもない。純粋培養されてゆく「愛情」が綴られているといえよう。

作者は人間ドラマの名作者として定評ある川上弘美。彼女の作品にはドロッとしたものも多いが、そう考えるとこれは異色作なのかもしれない。恋愛の中、ふとした瞬間に訪れる優しい気持ち。それを滋味として味わえるスロウな恋の話を、是非一読してほしいと願う。





 

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