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『ツレがうつになりまして。』
社会人になる前に読むべきエッセイ漫画

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『ツレがうつになりまして。』は、「映画のタイトルだろ」とお思いの方も多いかも知れませんが、もともとは女性漫画家・細川貂々(ほそかわてんてん)が2006年に幻冬舎から出版したエッセイ漫画です。シリーズは、続編『その後のツレがうつになりまして。』(2007年)、完結編の『7年目のツレがうつになりまして。』(2011年)の計3部作です。


内容はタイトルが雄弁に物語るように、作者の夫がうつ病におちいり、会社を退職し、退職金や失業保険も使い切り、自殺未遂をするまでになりながらも、作者である妻と生きてゆくという、夫婦エッセイものと言えましょう。

もっとも「夫婦エッセイ」と聞いてパッと浮かぶ、のほほんとしたムードではないのが、このタイトルとテーマが持つ妙味でしょうか。絵や表現は重くならないようになっていますが。

一般には、真っ当に働いている男性と結婚しているというだけでリアルが充実している、という見解があるかもしれません。しかしそれはいつ何がキッカケで崩れてもおかしくない砂の城なのだと、まざまざと物語る漫画だと思います。作中でうつになった「ツレ(作者の夫)」も、昔はスーパー・サラリーマンだったのですから、どんな人でも、恐らく当人も周囲も、一寸先は闇と言えます。


このシリーズ、特に10代の、社会人になる前段階の人にこそ読んで頂きたい。もちろん、社会人が読んでも何の問題はないのですが、「うつ」というものに対して理解を持って社会に出るか、持たずに出るかは、その人にとって極めて重要だと思うからです。

作中でも語られるように、世間には未だに根性論を土台にした「うつになるのは、結局心が弱いから」「うつになる方が悪い。自己責任だ」という思想、論調が根強くあります。しかしそれに対して文句を言っても多勢に無勢。ならば、そんな社会で自分はどうあるべきか、熟考してから、社会の荒波に漕ぎ出して欲しいと思うのです。人は心を持つ生き物ですから、何がどうあっても安定は難しいもの。しかし、備えることはできるのです。


作品情報

・作者:細川貂々
・出版:幻冬舎
・細川貂々公式サイト「とかげのしっぽ







 

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