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『成りあがり』
矢沢永吉の自叙伝を読んで

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過日、日本の歌手、矢沢永吉さんの自叙伝『成りあがり』を読みました。僕は矢沢さんの歌は「時間よ止まれ」しか知りません。お父さんがこの歌を好きで、聴いていたからです。しぶい声だなと思いましたが、僕にはそこまで好きにはなれませんでした。

僕が生まれた時には、矢沢さんはもう歌手でした。矢沢さんがバンドを組んでいたことは、この自叙伝を読むまで知りませんでした。「キャロル」というのがバンドの名前ですが、聞いたこともなかったし、彼らの曲も知りません。その時代を生きた人にしか分からないのかもしれません。

この本のタイトルを見て、よくある成功者のお話だろうと思っていました。違っていました。「成りあがり」という言葉が持つ本当の意味を、僕はこの本から教わった気がします。そして別にみんながみんな成功する必要はないんじゃないかと思いました。

矢沢さんは、両親が揃っていて、食うに困らない、円満な家庭で育ったのではありません。ご両親は矢沢さんが子供の頃に亡くなり、親戚をたらいまわしにされたそうです。きっと矢沢さんはさびしかったんだと思います。だからこそ自分の力で自分を養っていけるようになりたい、自分という存在を、世の中の人たちに認めさせてやりたいと思ったんじゃないでしょうか。

矢沢さんは、意地になって、がむしゃらに、上を目指しました。それは成金になることじゃなくて、自分が自分に成るために必要だったのだ、と思います。それが「成りあがり」という言葉の意味だと思いました。

『成りあがり』の中で、矢沢さんは、お金について語っていました。でもそれは、お父さんやお母さんを持たない矢沢さんが、自分を養うためにどうしてもお金が必要だったからなんじゃないかと思います。僕は、成功は成功を必要とする人がつかむものなんじゃないかと、『成りあがり』を読んで思いました。


作品情報

・著者: 矢沢永吉
・発行: 角川書店(1980)





 

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