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『ゆうきまさみのはてしない物語』
いわゆるひとつのエンドレス・サマー

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若さや人生の春を表す単語として「青春」は、広く知られていると思いますが、では、青い「春」の、次の季節は何と言うか、ご存知でしょうか。「朱夏」です。ちなみに、続いて「白秋」「玄冬」があります。ものの本によれば、朱夏とは、30代前半から50代後半までの、人生真っ盛りの時期を指すのだとか。

そういうところでは、漫画家、ゆうきまさみの長寿エッセイ漫画『ゆうきまさみのはてしない物語』(以下、はてもの)には、ゆうきまさみの夏が収録されていると言えます。連載開始は1985年、作者が27歳の頃です。それが現在まで30年間続いているのですから、彼の朱夏の記録と言っても、差し支えはないでしょう。

漫画のことですから、どこまで本心かは分かりませんが、作品内で作者自身、掲載誌が10周年を迎えた折、「雑誌が10年ももつとは思わなかった」と述懐しています。つまり期せずして、『はてもの』は、はてしなくなったのでしょう。

この漫画が30年も続いた理由のひとつには、「テーマがない」ことがあると思います。内容に関しては、縛りがなく、ゆうきまさみの思うこと、彼の周囲に起こったこと、なんでもありです。そしてノー・テーマゆえに、長期連載には付きもののマンネリズムをも味方に付けているのではないでしょうか。

考えてみれば、私たちの生活だって、別にテーマなんかありません。ただ生きてゆくだけですし、日々の暮らしとは、概してマンネリなもの。だからこそ『はてもの』は親近感が湧きますし、読者は安心できるのではないでしょうか。

ゆうきまさみの朱夏が脈々と刻み込まれた『はてもの』は、文字通り、ゆうきまさみ流エンドレス・サマーと形容されましょう。とは言っても、ゆうきまさみ独自の脱力感と軽妙洒脱な語り口によって、暑苦しさはありません。作者が半そでの服を着ている描写が多いところは、多少夏っぽいかも知れませんが。


作品情報

・作者:ゆうきまさみ
・出版:KADOKAWA
・連載期間:1985年3月~連載中
・ゆうきまさみ先生へのインタビューはこちら





 

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