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■ 6月30日から7月30日にかけて、1984年のポップスをフィーチャーします







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■ 不躾な質問ですが、書店にとって大きな柱となるのは、その時々の流行りの本とかになるわけですか? たとえば、ちょっと前だとピースの又吉さんが出した本だとか。

F:もちろん、そういうのもありますけど、こういう大型書店、あるいは中型書店も含めて(売上に占める割合が)大きいのは資格を修得するための教本やったりするんです。店によってはそれらが半分くらい占める場合もある。だから今AI(人工知能)に仕事を奪われるなんて話があちこちにあるでしょ? あれも脅威ではあるんです。


■ と言いますと?

F:たとえばですけど、AIの発達で弁護士という仕事がなくなるとします。そうすると司法試験も意味がほとんどなくなりますから、そのテの試験対策の本かて需要が一気に下がります。当然、売上は大幅に落ちる。書店にとっては本当に脅威なんです。


■ なるほど。そうなると確かに、中規模の書店なんかは特に厳しくなりそうですね。するとますますアクチュアルな、フィジカルな書店の存在理由、哲学でいうレゾン・デートルが問われてくるような気がしますが‥‥。

F:ライヴ感覚、とはよく言いますけどね。実際の本屋とネットの違いって、たとえば目的の本を探しに来たら、「あれ、こんな本があるんや」という、予期せぬ出会いがあることやと思いますし、そのためには棚に美しさ、ストーリー性がないとあかん、とは思います。


■ ストーリー性、ですか?

F:たとえば、ノンフィクションならノンフィクション、哲学なら哲学とジャンル分けして、あとは出版社別、作家別に配置するのが一般的です。検索機があるなら、その方がわかりやすいという面もあります。でもそれだけになると棚と対話して探す、棚と対話するということがなくなる。



本当に面白い本って何かと言いますと、書店員が、この本どのジャンルに分けたらええかわからへん、となる本なんです。既存の枠組みに当てはまらない、そういう本をどう配するかが書店員は問われる。書店の棚って、そういう試行錯誤で作られていくものなんです。だから本の並び方に関しては、これがベストだというものなんてありえないんです。


■ あぁなるほど。最良の棚を作らないと、良い「予期せぬ出会い」を来店客に提供できない。でもその最良には正解がない、ということですね。

F:だから本屋の工夫と言ったら、ポップ作りとかもあるとは思いますけど、ポップ作るよりお客さんと喋った方が速いんちゃうか、と思うんですけどね(笑)。取次からも、雑貨やコーヒーを置いたらどうや言われますけど、それは本屋の領分やないと思いますし。扱えるのはせいぜい本と関係がある文具とかくらいまでです。本屋は本を売る所なんですから。


■ そこには満腔の同意を表します。しかし、お客さんに干渉せよ、というのはハードルが高すぎないですか?

F:というか、先方さんから干渉してくる、いわゆるクレームを言うてきはるお客さんがいるでしょう。厄介かもしれへんけど、厄介なお客さんほど、ええお客さんになってくれるもんなんです。だってホンマに本のこと、本屋のことを、その人なりに考えてくれているわけですから。

少し前に反「ヘイト本」のフェアをやっていたら、「お前んトコ、こんな本並べとるけど、韓国や中国の連中が日本を侵略しようとしとんの知らんのか!」言わはるお客さんがいたんですね。そんなん知りませんでしたわ~言うて、こういう企図でこういう並びにしましたと説明したら、一応聞いてくれる。クレームが来たら、その分こっちも自分の考えを言えるんです。一番あかんのは、クレームに対して、会社の体裁でものを言うやり方です。


■ 向こうは個人なんやから、こちらも組織ではなく個人で、と?

F:まぁウチの場合は、仮に「社長を出せ」言うお客さんがいはったとして、万が一社長にクレームが行っても、「それは福嶋が勝手にやったことです」と言われるだけですけどね(笑)。