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日本の雑貨
「倉敷意匠計画室」代表

田邉真輔

< 2016年07月31日 >

岡山県倉敷市に「倉敷意匠計画室」という雑貨ブランドがあります。なにやらおカタい名前ですが、市営事業や第三セクターではなく、民間人が立ち上げたブランドです。紙や布、箱など、様々なジャンルの個人作家さんや工房とコラボレーションして、独自の感性に基づいた雑貨商品を世に送り出しています。また、自前でカタログを発行し、有望な作家さんや作り手の想いをユーザーに伝えることにも腐心しています。

大きくなったり有名になったりすることを志さず、個人の想いありき。そんな「倉敷意匠計画室」の代表、田邉真輔さんに、インタビューをお付き合い頂きました。テーマはズバリ、「感性と資本主義」です。



■ よろしくお願いいたします。まずは「倉敷意匠計画室」とは何か、どういった経緯で作られたブランドなのか、教えて下さい。

田邉真輔(以下、T): 一言で言えば雑貨ブランド、雑貨メーカーなんですが、経緯はと言いますと、もともと印刷デザインを手掛ける会社だったんですよ。紙や布に印刷する仕事だったんですが、仕事を続けていく内に、徐々に印刷のウェイトが増えていって、企画、デザインの割合が減っていったんです。それで、これは自分の思い描いていた方向性と少し違うなと感じて、自分が企画したものを卸したい、ということで「倉敷意匠計画室」を立ち上げました。


■ 卸のノウハウとかも多少はあったんですか?

T: いや、ありませんでした。当時はインターネットも普及していませんでしたし、地元(岡山)を出たこともない人間だったので、とりあえず電話帳で、東京の大きそうな問屋さんを探して、飛び込みで営業しましたね。それでうちの商品を面白いと思ってくれる人たちもいて、業界の方が集まる見本市に出展したりもしたんですよ。でも7~8年くらいで、それもやめました。理由のひとつとしては、やっぱりバイヤーさんとかが求めるのは、ウケの良い商品なんですよ。


■ インパクトがあったり、利便性が優れていたり、そういったものですかね。


「倉敷意匠計画室」代表
田邉真輔


岡山県在住。
1981年、印刷工場を創業。
1989年、社名を「有限会社 倉敷意匠計画室」に改名。
1992年、自社ブランド製品の企画生産を開始する。
2012年、初の直営店「アチブランチ」をオープン。
T: そう。でも作り手の想いだとか感性的なものには、なかなか目を向けてもらえないわけです。それで、たとえ数としては少なくても、「倉敷意匠計画室」の商品に共感してくれる人たちに、先ずは届けたい、と思うようになっていきました。だから今、うちの商品を置いて下さっているのは、うちの商品や感性に共感して下さった全国のセレクト・ショップが主で、百貨店とかには、すすんでは卸してないんですよ。


■ そうすると、倉敷市にある直営店「アチブランチ」に今私がお邪魔しているわけですが、こちらはその旗艦店にあたる、と?

T: そうなりますかね。直営店と言ってもここしかないですが、元々ここも作るつもりはなかったんです。ここは4年前(2012年)にオープンしたんですけど、それまでは雑貨を紹介する雑誌とかに「倉敷意匠計画室」と名前が載っても、その実態がよく分からない存在だったんですよ(笑)。それが「こういうモノを扱っています」とわかりやすい形で提示できるようになったのは、良いことなのかな、と思いますね。


■ 最初はそんなに乗り気ではなかったんですね。

T: だってお店を構えるとなると、従業員も雇わないといけませんし、ただでさえ小さい会社ですからね(笑)。今も、物流担当やお店の店員を合わせても15人くらいの規模ですから。でも今までのお客様、卸先である小売店様ですが、というのは、主に県外の都市部におられて、県内のお客様ってごくわずかしかいらっしゃらなかったんですね。それは現在も、かもしれませんが(笑)。もう定年も近い年齢ですし、地元のお客様に対して仕事できるのは、これが最後のチャンスかなと思って、構えることにしました。



■ 直営店「アチブランチ」外観