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■ 2月29日から3月30日にかけて、文房具をフィーチャーいたします。







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静岡は茶の生産量・消費量共に全国トップ。静岡駅から前田幸太郎商店に着くまでの25分に、何件あるのか、というくらい、茶店を見かけた。通りの名前からして「茶町通り」だった。

「これでもお店の数は減ったんですよ。やっぱりお茶離れというのが、静岡でもあります。何しろ急須を置いてない家もあるくらいですからね。これは深刻な問題かも知れないです。お茶を飲むのに、ペットボトルやティー・バッグが今は主流ですけど、やはり一番美味しいお茶は、急須で淹れたお茶なので」

「ペットボトルで供給するには、やはり量を仕入れないと成立しない。それは本当に下級茶ですから。変な現象なんですが、下級茶だから安いはずなのに、ドリンク会社が大量に買いに走るから値が上がる。そうすると農家もドリンク会社向けの下級茶を生産した方が、採算が良いわけです。で、良いお茶(上級茶)を作ってくれなくなっちゃったりして・・・」


静岡でも「お茶を淹れる」という習慣は、希薄にはなってきているのだろうか。とはいえ全国1位の茶の町であることに相違はない。そしてそういう環境なら、前田のように優れた茶師も、そりゃあ生まれるだろう、と邪推してしまうが。

「それはまた別問題ですね。静岡の他にも鹿児島、京都など、お茶の名産地はいくつもありますし、お茶を見る環境が整っているなら、静岡でなくても良いと思います。実際、ウチでは高知のお茶とかも使っていますし」


確かに、商業として成立しているかどうかは別として、日本には各地のお茶というものがある。その取扱う量と個人の技量とは、必ずしも比例しないだろう。また、静岡とは言え、トップの座にあぐらをかいてなどいられない。お茶離れに加え、全国各地でお定まりの、後継者不足という問題があるからだ。

「寂しい話ですけど、お茶畑が手つかずで、荒れ地になっている所も多いです。お茶の生産量も全盛期、と言っても30年以上前ですけど、の1/3くらいになって、あそこの工場が無くなった、とか聞きますし。静岡は転出が多くて、今、問題になっていますから(苦笑)。相手が自然というのもあり、毎年、何が起こるか本当に分からないので、心臓に悪いです。実際、茶師には心臓の悪い人、多いですよ(笑)」


「何年か前、ウチの取引先の茶畑が、霜にやられて全滅になったことがありました。畑一面、もう紅葉になっちゃって。なんとか似たようなお茶をと、あちこち駆けずり回って、どうにかなりましたけど」と前田は苦笑しながら語る。如何様、若い人の言葉で言うと、メンタルが強くなくてはやっていけない訳だ。前田に、今回のインタビューの眼目である良いお茶とは、そして今後の展望は、を訊ねた。


前田幸太郎商店前にて

「なにかと忙しい世の中ですけど、飲んだ人の気持ちが安らぐような、ホッとするようなお茶を、これからも作っていきたいですね」