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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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■ 「室山まゆみ」は、実質お2人のユニットで、でもお姉様である眞弓先生の本名でもありますが・・・

M: 姉が眞弓で私が眞里子でしょ? 「ゆみまりこ」って名義でデビューするはずだったんですよ。当時漫画家になりたいって2人で上京して、姉は普通の会社にお勤めもしてまして、編集さんからの連絡が姉の職場に回ったんです。当時って電話が高くて、姉(の職場)としか連絡が取れなかったわけです。姉はちゃんと「2人で描いてます、ペンネームはゆみまりこです」って言ったんですけど、でも当時の編集さんが「俺はペンネームが嫌いだ」と(笑)。それで、「室山まゆみ」になっちゃったんですね。


■ その時電話をひいていたら、あるいは携帯電話が普及していたら・・・

M: 姉はお勤めしていて、私が応対したはずですから、「室山まりこ」になっていたかも知れないんですよ(笑)。その後、名義を変えりゃあ良かったのに、もうペンネームは変えれないって思い込みもあったんですけど、深く考えずに来てしまったんですね。だから本当に迷惑したんですよ。


■ 世間の耳目はお姉様に集まりますからね。

M: それはどうでもいいの。友達も少ないですから、「あんたまだデビューしてないじゃない」って突っ込んでくれる人もいなかった。ただ、「室山まゆみ」だと私は作業員になってしまう、つまり税金が半々にではなく、姉の方にたくさん来てしまうっていう事態になるわけです。


■ 出版社で伝票を分けてもらうとかは・・・?

M: 知らなかったの。高校卒業したばっかの私と、ハタチそこそこの姉でしたから、税金関係なんて・・・姉は「私の名前は漢字です。室山まゆみではありません。ひらがなの方はペンネームです」って食い下がったんですけど、税務署は認めてくれませんでした(笑)。これだけが悔しかった思い出です。


■ 今年、『あさりちゃん』100巻達成に至るまで、名義のせいでの迷惑はそれだけっていうのも、お2人の和やかな関係性を表している気がします。

(C)小学館・室山まゆみ
M: う~ん、(姉の名前しか表に出ていないから)親戚のオジさんに「まだ姉ちゃんに食わせてもらってんのか」って云われた、とかありましたけどね(笑)。でも『あさりちゃん』も、最近まで100巻も出ないかもと思ってた。というのも、95巻あたりで、『小学二年生』までで学年雑誌が休刊になったでしょ。怠け者なもんですから(笑)、単行本を全部描きおろしだけでやるのはキツいし、(1年につき3冊出すという)刊行ペースも落ちます。連載して本を出すっていうのが、限界に近づいていたんですね。けど自然消滅はしたくないな、と。それなら100巻までって決めて、終わろう、と、2人で話し合って決めました。


■ 学年誌の休刊がなければ、『あさりちゃん』は続いていたかも、と?

M: 少なくとも『小学三年生』『小学四年生』まであれば・・・勿論、「ウケないから切ります」って云われなければ、続けてもいいかなって気持ちはありました。でも続けたとしても102巻とか、中途半端になるでしょ? それがイヤだったんですよ。110巻までだって、もう・・・歳が歳ですから(笑)。あと、長すぎるのもつらいな、とは思ってましたし。


■ 確かに、全巻置いている本屋さんなんてないですからね。

M: 新刊しか置いてもらえませんからね。あと、女性はね、そんなに長く(同じ本を)買いませんわ(笑)。男の人って、買い続ける人は買い続けますけど。自分が読者として読んでる本とかも、20~30巻までいくと、もういいか、ってなりますし(笑)。だから50巻くらいで終わって、次、『新あさりちゃん』とかにすればよかったのかな、と。これはもう、後になって考えたことですけど。


■ 翻して言えば、50巻あたりは、そういう考えも浮かばないほど、お2人の作家活動が波に乗られていた、ということですか?

M: でも読み返してみたら、50巻近辺って駄作が集中してます(笑)。で、80巻あたりで、これじゃマズい、って活を入れなおしたり。


■ 先生の感じる、ギャグってこういうものだ、みたいなものはありますか?

M: ギャグってあまり意識してないんですよね。生活マンガ、児童マンガっていうくらいの認識しかないですし。ただ、読んで楽しいものであればいい、本当に、ちょっとした時にフッと読んで、「面白かったな」って思ってもらって、パタンと閉じてもらえばいい。ちょっとだけ、一種の問題提起をしたりしてる部分もあるんですけど、基本、100巻通して楽しんでもらえればそれでいい、クスッと笑ってもらえたらもっと嬉しい、と。


■ いや、先生の作品は、笑いの要素を結構取り入れていると思いますよ。

M: でも笑いってわからないですよ。こっちが笑ってくれるだろうって思った所に、「あんなこと描くなんて」っていう批判の手紙もあったりしましたし。ただ、『あさりちゃん』で心がけてたのは、勿論大人が読んでも楽しいものっていうのもありますけど、まず子供が理解できること。


(C)小学館・室山まゆみ
■ たまに小学生には理解できないお話がある、という手紙が来たこともあったとか・・・

M: ま、そこで「えい、このバカガキ!」というわけには行きませんから(笑)。100%はムリでも、読んだ子供達の80%が分かってくれればいいな、と。でも「読んで分かりにくかった」という手紙は、大人の方が多かったような気がしますね(笑)。



インタビューと文: 三坂陽平
取材協力: 石井麻衣子(小学館)