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■ 2月29日から3月30日にかけて、文房具をフィーチャーいたします。







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■ なるほど。クツの本場って、浅草と神戸があるじゃないですか、神戸はケミカル・シューズの本場ですけど。神戸には魅かれなかったんですか?

N: 神戸に関しては、よく知らなかったというのが本音です。でも京都っていうのは、ずっと前から魅かれるというか、住みたいな、と思っていたんです。モノを作る時に、その土地の影響って、すごく受ける。だから、日本的なクツを作るのなら、日本の伝統とか日本的な街並みが周りにあるところの方が良いだろう、と。僕のテーマで考えた時に、世界中で一番良い場所だと思いましたね。


■ 実際来られてみて、いかがでした?

N: とても良かったと思います。東京にいると、京都って排他的だとか噂も聞きましたけど、僕がモノを作ってる人間だからなのか、西陣という土地柄なのか、そういったこともなく。まぁ、僕が気づいてないだけかもしれないんですけど、それは(笑)。


■ 革下駄の話ですけど、造形はもとより、素材もやっぱりこだわられていると思いますが、その辺りをお聞かせください。





N: 土台にしているヌメ革っていうのは、濡らして形状を作って乾かすと、その形状になるんです。それを活かしたいというのと、カタすぎず柔らかすぎず、履き心地が良いっていうのがありますね。だから、素材からデザインを考えた、とも言えます。


■ 下世話な話ですけど、今年消費税が上がって、こちらのみならず、多くのところが値上げせざるを得ない環境とは思うんですが・・・

N: ここ10年で、材料費が当初の1.5倍以上になっている状況なんですよ(笑)。3、4カ月に一回上がる感じでちょっとずつ上がっていって、現状ここまで上がっている、その上に、この4月で(消費税の増税によって)製作に関わる全ての材料が値上がりしましたから。もちろん、常々企業努力はしていますが、誠に不本意ながら、今回は価格変更をさせて頂きました。


■ 値上がりの傾向って続くと思いますか?

N: はい、続くと思います。材料は一回(値段が)上がったら下がることはまずない。でも、その中でも、より良い商品をご提供できるように、さらに努力していきたいとは思います。


■ 話が逸れてしまいましたが、デザインについてのお考えをお願いします。

N: 珍しいデザインが多いと思われがちですが、常に基本に忠実であることを心がけています。履き口のカットだとか深さだとか、ごくごくシンプルに作っているんですね。流行に左右されるようなラインやカットとかあるわけですけど、そうではなく、僕の中に蓄積されたスタンダードを再現するようにしています。


■ それでこそ、良い履き心地が実現できるわけですもんね。話は前後しますが、浅草時代のお知り合いなど、吉靴房についてどういう評価をされましたか?

N: まずテーマからして「こんなのイケるわけない」みたいなことを云われたこともありましたね(笑)。それは心配してくれた人たちが、云ってくれたんですが。今は「よくやって来たな」と、褒めてもらえるようにはなりました(笑)。


■ 長い苦難の末に、と(笑)。それはお客さんのお陰でもあるかと思いますが、お客さんって、どういう方が多いと思われます?

N: ・・・いろんなものに対する意識が高いというか、常識にとらわれない人が多いかな、とは思いますね。あとは、和服を着られる方とか、単純に草履だと寒いといって、足袋型を購入していただけることもありますね(笑)。




■ お客さんの声から、作るモノが変わって来たな、とかはありますか?

N: 僕はいわゆる個人作家ですが、こう見えてお客さんの声、気にするんですよ(笑)。同じ要望がいくつか来たら、じゃあ作ってみようかな、となりますし。ウチのラインナップでスタンダードなモノが増えたのも、そういう声をいくつか頂いたからなので。一時期、取り上げて頂いたのが革下駄ばかりだったので、草履屋だと思われていましたからね(笑)。スタンダードな靴を作るきっかけは、お客様から頂いたような気がしています。