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■ 2月29日から3月30日にかけて、文房具をフィーチャーいたします。







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■ メガネ作りにおいて、やっぱり中国の割合は世界的に大きいですか?

O: 大きいです。日本以外でメガネが有名な国、たとえばイタリアなどでも、1~2万円台で売ろうとした場合、やはりコスト的な面で中国に依存しているのが現状ですからね。バイヤーさんの中には「北朝鮮製はもっと安くできるよ」とか、「ベトナムも安いよ」とか言う方もおられましたけど(笑)。ま、それは少数派で、中国が大半というのが現状かと。



笈田一人
めがねミュージアム内
めがねshop 店長

1970年、福井県生まれ。
父親がメガネ産業に携わっていた事もあり、
自身もメガネ産業に就職。
これまで、製造、卸売り、販売等、
メガネに関わる様々な業種に携わり、
2011年、めがねshop店長に就任。
視力は悪いわけではなく、いわく
「1.2くらいあるかと思います」とのこと。
ちなみに、写真で掛けているメガネは
シャルマンの「ライン・アート」。
■ ああ、ありますね、格安メガネ(笑)。ちなみにこちらのショップの場合、価格帯は平均するとどれくらい・・・?

O: メガネの産地として有名とは言っても、主に眼鏡枠(フレーム)の産地ですからね。データをいつも見ますが、フレームだけだと2万5千円~3万円。で、メガネにこだわられる方は、やはりレンズにもこだわりがありますから、レンズ込みで5万円前後と見て頂けると良いかと思います。


■ そうすると、格安メガネとかは別として、そこまで高いわけじゃないって気がしますね。最後に、メガネの現状とこれからについて、なんですが、先程のお話からすると、こちらの顧客層は主にメガネ好きな方か、ファミリーかシニアという感じですか?

O: いや、それが若い方も多いんですよ。就職して、初任給でメガネを買われる方とか、女性でも「今のトレンドはどんなのですか?」と来られますし、良い掛け心地を求めて来られる方もいます。少し前の世代の方だと、メガネとダサいはイコールかも知れませんが、今はそんなことなくて、若い人でもダテメガネを使われるなどがあります。20歳前後の若い方達が九州から「夜中に出て、寝ないでここまで来ました」と云って来店されて、それぞれにメガネを買って行かれて、「この後どうされるんですか?」と訊いたら、「もう帰ります」という、嬉しいケースもありました(笑)。


■ 「600マイル・ブレンド」みたいな話が(笑)。いや、昔、走り屋が横浜から三宮(兵庫)の珈琲店まで、一杯のコーヒーを飲むためだけに、日帰りツーリングをするというのが流行ったんです。そんな話はさておいて(笑)、海外の観光客などは?

O: 海外の観光客の方も来られます。中国の富裕層の方だと20人くらいで来て30本くらい買って行かれるとか、1人で5~6本買って行かれるとか、いわゆる「爆買い」ですね(笑)。メガネにおいて日本製と中国製、何が違うのかと言うと、見た目では違いが分かりにくいんですが、細かい部品の工程数が違います。ネジも外れにくいのを用いたり、メッキも下地の塗装に手間を掛けたり、日本は精度や検査に凄く厳しいですから。反面、海外の方には「福井のメガネは納期が遅い」とか云われたりするんですが、時間と手間を掛ける分、品質は良いわけですから、そこは正直、許して欲しい所です(笑)。


■ 良いメガネは一生モノと言いますからね。これからの課題などはどうお考えでしょうか?

O: 産地としては後継者不足などの問題があります。昔は作れたモノが、今はもう作れる会社が無くなって作れないとか、先程のOEMの話に戻りますが、値段を圧迫されて後継者を育てる余裕がないとか。後継者問題はリーマン・ショック(2008年)前後から顕著になりました。バブル崩壊(1991年)の頃はそんなでもなかったんですが。今はもう、有名な職人さんのほとんどがお爺ちゃんで、その方が亡くなられたら終わり、という所も多いですから。

O: ただ業界として見た場合、ニーズが、つまりメガネ人口が急激に減るということはない気がします。今は少子高齢化と言われますが、高齢者の方だと、目に異物を入れる行為には危険度も増しますから、老眼鏡の必要性が高いわけです。コンタクトの批判ではありませんが(笑)。で、ありがたいことに若い人にも受け容れてもらえているので、だから見通しは結構良いんじゃないかなと。あとはそこで各社どう個性を出すかですよね。もう「品質が良い」だけじゃ、追いついていけなくなる気がします。そこに何をプラス出来るのか、そしてデザイナーや若手の育成をどうするのか、ですね。


めがねミュージアム内 めがねショップ入口

■ 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

O: ありがとうございました。


インタビューと文: 三坂陽平