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■ 2月29日から3月30日にかけて、文房具をフィーチャーいたします。







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日本のクツ
オールド・ハット 大阪店店長

高井貴亘

< 2014年05月15日 >


良いクツは、良い作り手により作られるもの。しかし、そのクツを使い続けるにおいて、避けて通れないのは、クツの修理。良いクツ、気に入ったクツを好ましく履き続けるためには、適宜、クツのメンテナンスが欠かせない。

クツを修理する人をコブラーというが、良いクツを使い続けるためには、良いコブラーが必要。快晴の春の昼下がり、良きコブラーであるオールド・ハット大阪店の店長・高井貴亘さんに、お店でお話を伺ってみた。



■ 本日は宜しくお願いいたします。まず、こちらのお店を大阪・御堂筋のそばにかまえられた、その経緯からご説明願えますか。

高井貴亘(以下、T): そうですね、(オールド・ハットって)元々は、ヴィンテージの服を扱っている店だったんですけど、その社長と私が知り合いで。というのも、私が以前イギリスへ(クツ作りの)勉強に行っていたんですけど、その修行先の師匠と、その社長が知り合いやったんです。で、日本に帰ってきて、「今度は服じゃなくて、クツに特化した店を(大阪に)作りたい」という話が(社長から)出て、2年前(2012年)の春にオープンしたんです。


■ そこで高井さんが抜擢されたということですね。イギリスのクツって、悪く言えばカタい、良く言えばしっかりしているっていうイメージがありますが、実際に行かれてみていかがでした?

T: まぁ、しっかりしているんですけど、今おっしゃられたみたいに、履いたその日から、たとえばスニーカーのように軽快に、とは行かないですよね。でも軽いと耐久性が弱かったり、ということもあるので、自分としては、多少最初はカタくても、長いこと使えるクツの方が良いと思うので、そういうとこでイギリスのクツは好きですね。




■ なるほど。イギリス修行時代というのは、その師匠の方は、オーダーメイドのクツの作り手だったんですか?

T: はい、もう完全に。


■ いわゆるビスポーク(客と作り手の話し合いから作られる、完全なオーダーメイド)だったわけですよね。それを日本でどう活かされていますか?

T: すべて手で、とか、僕自身そこまでこだわりはないんですけど、修理にしてもやっぱり人間の手が入らないといけないとことかあって。手でしかできないことっていうのもあるので、そこは大事にしていきたいと思います。例えば、修理に持ってこられるのでも、いろんな素材の、いろんなクツがあるんですよ。そこでマニュアル化とかしちゃうと、やっぱり対応できる幅が狭くなりますから。手を使って頭を使って、ってやらないと(対応できない)。


■ なるほど・・・ところで、「良い作り手」が必ずしも「良い修理屋」ではないと思うんです。その違いってどう捉えておられますか?

T: そうですね・・・あ、ちょっとだけお待ちください。


(きれいな女性客が来店)
(その後、続けて年配の男性客も来店。一時中断)


T: すいません、えーと、なんでしたっけ?


■ いやいや、お邪魔してしまって、こちらこそすみません。「良い作り手」と「良い修繕屋」についてのお考えを、っていう・・・

T: ・・・まぁ、個人の感じ方になってくるとは思うんですけど、僕個人的に良いなぁと思うのは、良いクツって長く履いていけるクツやと思うんですね。サイズや製法とか色々ありますけど。やっぱりデザイン面で、時間が経って「うわ、もう履けへんわ」ってなるのだと、ちょっと・・・


■ つまり普遍性がある、ってことですよね。そういうものを作れるのが、良い作り手だと。

T: で、修理となると、駅とか路面でも色々ありますけど、お客さんが何を求めていらっしゃるか、っていうのになると思うんですよね。例えば、今来て頂いたお客さんなんかも、ある程度時間にゆとりを頂いて、「預けておくから、きっちりやっといてね」って方が、ウチだと多いんです。逆に「10~15分くらいで、早く仕上げて」という方だと、ウチだと(時間が掛かり過ぎて)・・・だからウチなんかは、「クツをしっかり履けるようにして欲しい」というところで利用して頂けたら、と思います。


「オールド・ハット」大阪店店長: 高井貴亘さん
ホームページ: オールド・ハット -シュー・アルチザン-
所在地: 大阪市中央区南船場4-9-6
順慶町アーバンライフ101
電話・FAX: 06-6226-8241
定休日: 火曜日
■ イギリスのクツの特徴でもある堅牢性というか、しっかりした直しを提供されている、と。例えば、先ほどの女性のお客さんなんかはブーツを引き取りに来られましたけど、別に革靴とかだけじゃないんですね。正直、ブーツが出てきて「おぉっ!?」となりました(笑)。


T: ああ~、そうですね。時期的なものですけど、これからなおされる(関西弁で「収納する」の意)前に、納得いかれる形に修理してからなおしたい、というような。衣替えの時期ですからね(笑)。他のお客さんのですと、例えば、「リウェルト」っていう、フチを縫い付ける作業がありますけど、それなんかは手作業でないとできないんです。