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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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■ マンガを学ばれていく中で、日本のマンガに対するご考察は、どう変わっていきましたか?

Y: 韓国出身なので、まず韓国のマンガ文化と日本のマンガ文化を比較することからはじまったんですね。それが日本以外の国のマンガ事情も解るようになってきて、なぜ日本のマンガは、ここまで成功をおさめたんだろう? なぜ他の国では日本みたいな状況にはなっていないんだろう? と考えるようになりました。


■ 成功というのは国内で浸透するってことですよね。その答は出ましたか?

Y: いくつかの要素があると思います。単純に日本では、素晴らしい才能を持った作家が次々と登場したこともあるでしょうし、他の国に比べて、規制がそこまで厳しくはなかったこともあると思います。だから作家の才能を伸ばす市場があったことが大きいかと。


■ 「マガジン」や「サンデー」の草創期には、けっこう社会問題になったみたいですが、確かに他国ほどの規制はありませんよね。パキスタンなどイスラム教徒が多い国では、進化論が否定されているから、ポケモンも禁止されているとか。

Y: そういった宗教的規制や戦争でマンガを楽しむどころじゃない状況が、戦後の日本では発生しなかったのは大きいと思います。韓国や他のアジア諸国、あるいはヨーロッパ諸国では、まず規制が厳しかったり、軍事政権の登場などで、作者も読者もマンガどころじゃない状況があったりしましたから。


■ 確かに、現実に生きるか死ぬかって切羽つまった状況は、戦後の日本では、個人的なケースや自然災害を除いて、存在しませんでしたからね。

Y: もちろん、他の国々でも日本と同じように平和だったら、日本のようにマンガ文化が発展したかというと、そこは判りません。そこはまた今後の考察の課題でもあります。ただ少なくとも環境の面で、多くの他国ではマンガ文化の育ちようがない状況もあったと思っています。



■ そのお仕事の話ですが、年間どれくらいのマンガを読まれるんですか?

Y: 研究員は皆そうですが、仕事で読むマンガと趣味で読むマンガがあって、合わせると数百点くらいになります。展覧会の企画があるとしたら、その先生の作品はすべて読まないと、企画ができませんから。で、仕事に疲れた時には、趣味のマンガを読むって感じですね(笑)。


■ 個人的には興味のないマンガでも読まないといけないのは・・・

Y: でも、それまで興味がなくても、それをキッカケに新しい魅力に出会う感じです。展覧会が開かれるだけファンがいるということは、魅力がある証拠ですから。私がそれまで知らなかった、気づいていなかっただけで。

絵だけ見ると普段あまり読まないなというスタイルのマンガ家さんでも、読んでみたら意外とユーモアがある人だと、仕事を通じて発見できたりするんですね。人だって、そうじゃないですか。外見だけ見たら怖そうだけど、話してみると楽しい人だったり、ちょっと天然だったり。そういう面では似ていると思います。


■ なるほど。最後に、今抱えておられるお仕事をひとつ教えて下さい。

Y: 9月にデンマークでマンガの展覧会を開催することになって、その企画に取り掛かっています。今回は特定の作家さんの展覧会ではなくて、テーマを決めて、テーマにそった内容の、いろんな作家さんの作品で構成された展覧会を予定しています。それは現地の人々が持っている、そのテーマに対するステレオタイプなイメージを良い方向に裏切らないといけないので、私にとって、ひとつの挑戦です。そのテーマは「少女マンガ」なんですけど。


■ 幅広すぎません?(笑)

Y: 広いです(笑)。少女マンガって、キラキラした大きい目のキャラクターが恋愛ばかりする感じでしょ? という偏見があるかと思いますが、そればかりじゃない、いろんな側面があることを伝えられたらと思っています。


■ それはぜひ成功させて頂きたいと思います。本日はありがとうございました。


■ 京都国際マンガミュージアム 外観


インタビューと文: 三坂陽平