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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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Y: 私がお店に入った頃から、日本のワインの取り扱い自体はありましたが、レストランでのハウス・ワイン用に卸すとか、ごく限られた量でした。と言うのも、海外からブドウ搾汁を輸入して、国内で発酵させてビン詰めをすれば、「国産ワイン」として売れるため、昔は日本のワインと言えばそういうのが主流で、味もそんなに美味しくなかったし、人気もそこそこでした。そういった「国産ワイン」は、実は今でも多くあります。


■ 国内にビン詰め工場があれば国産扱いですから、インチキですよね(笑)。

Y: 造ってらっしゃる方も昔からの事情がありますから、私は「インチキ」とは言いたくありません。ただ、正直、日本のワインは美味しくないと、昔は思っていました。でも15年ほど前、山梨に温泉旅行に行った時、たまたまそこで山梨産のブドウで造ったワインを出されて、「どうなのかなあ」と思いつつも飲んだら、美味しかったんです(笑)。そして、「これは今後、もっと美味しくなる」と直感的に思いました。



■ 日本産のブドウを使ったワインだけど、将来を期待させる何かがあったと。

Y: はい。そして、産地を訪れるようになって、生産者の方々とお話をし、試飲を重ねてきました。当時はうちにワインを買いに来るお客さまも、日本のワインには偏見があり、お薦めしても反応はよくありませんでした。「え~っ、ホントに美味しいの?」って感じで(笑)。でも、その時点でも美味しかったですし、「これは今後、さらに良くなるワインです」と説明して、試して頂いたり・・・。10年経った今では、栽培・醸造技術もさらに向上して、あの頃とレベルはケタ違いに上がっていますね。

ワインを造る、ワイン用のブドウを栽培することに関して、日本はもともと地理的に向いてない所が多いんですよ。ざっくり言いますと、雨が多すぎるし、日照量は少なすぎるし、気温は高すぎる。その三重苦を乗り越えて、少しでも向いた土地を探し、これだけのワインを作り上げてきたのは、「日本人、すごいな」と思わされます(笑)。山梨の勝沼は、もう100年以上もワインを作ってきた伝統があり、今は長野や北海道など他の地域でも、ちゃんとしたワインを、それぞれのやり方で造ってらっしゃる生産者の方がいらっしゃいます。


■ それぞれ、ワインの造り方を試行錯誤されているんですね。

Y: 昔は日本独自のブドウの栽培方法や、日本酒式のワインの造り方がありました。ワインをビン詰め前に火入れするとか。その後、ヨーロッパのやり方に従おうと、生産者がヨーロッパで勉強するようになりました。そうしてヨーロッパのやり方をそのまま日本で試そうとした時期もありましたが、地域が違うのに同じことをやったって、上手くいかないんですね。じゃ今度は、ヨーロッパで勉強したことをベースに、日本の気候だったらどうすればいいか、などを試行錯誤されてきたのが、ここ10年ほどでしょうか。そういった努力の積み重ねで、今日、日本のワインの品質は飛躍的に伸びているように思います。



■ 流通面では、舶来品と比べていかがですか?

Y: うちのような規模のワイン・ショップは、自社でひいているワインも多少ありますが、基本的には輸入元さんからワインを購入しています。そこには卸値があって上代(希望小売価格)があり、その間で値段をつけて販売をしていますが、日本のワインは卸値が輸入ワインに比べて高い傾向があります。それは恐らく、日本酒の流通ルールに則っているからだと思います。

日本酒の流通は、卸値が高く、希望小売価格で販売されます。でもワインだと、希望小売価格より下げて売る、特に業務用だと、かなり下げて売るのが一般的です。つまり卸値が高い日本のワインというのは、ワイン・ショップにとって利益が取れない、扱いにくい商材という一面があります。だからうちでも、輸入品を減らして国産品を増やすと、大幅に利益が減ってしまうので、なかなか取扱品目として増やしにくいという事情があります。ただ、最近は卸値を下げようとする動きもありますし、やりようによってはやれなくはないのかな、とも思います。



■ ここ10年を経て、様々な面で変化の途上だと?

Y: そうですね。本当にここ十何年で変わりましたし、まだまだ良くなっていく途上だと思います。山梨の『グレイスワイン』さんなど、もう十何年来のお付き合いですけど、今では世界中で認められてますよね。その当時も美味しかったのですが、「もっと良いワインを作るためには、どうしたらいいのか」と、ずっと考えて悩んでおられた頃を知っていますから、今のワインの品質の素晴らしさや、世界での評価を見ると、思い入れが強い分、泣きそうになります(笑)。


■ 海外のワインと比べて、日本のワインを言葉で表現すると、どんな感じですか? メチャクチャ抽象的でおおざっぱですけど。

Y: もちろん北海道だったり山梨だったり、産地によってワインのスタイルは違いますが、代表的なところでは「甲州」という、日本独自の、ワイン向けブドウ品種があるんですね。それは女性に例えると、欧米のようにグラマラスでお化粧をしっかりした華やかな美人ではないけれど、柳腰で凛とした和服が似合う、楚々とした大和撫子と言われたりします(笑)。ただ、やっぱり品種によって違います。今はもっと多種多様なワインが造られていますからね。