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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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■ 吉田さんは、ずいぶんお若くていらっしゃいますが、『ワイングロッサリー』の社長さんなんですよね。

Y: 私の祖先が、明治10年にお酒や醤油の小売業を始め、私の父の代からはワインなどの輸入品を扱うようになりました。『ワイングロッサリー』という会社を創業したのは35年前です。その後、父が早くに亡くなり、母が後を継ぎ、私は『ワイングロッサリー』の3代目になります。


■ 世襲制だったんですね。

Y: 形はそうですが、後を継げとは一言も言われず、昔は継ぐ気もありませんでした。食べることが好きだったので、学生時代は栄養学部に進んでいました。一応、栄養士の資格も取りましたので、だから栄養士になるかもしれなかったんです。



■ それはそれで悪くない気もしますが・・・

Y: ただ、栄養士は仕事として細かい計算がいっぱいあって、おおざっぱな私には向いてないと思ってしまって(笑)。そんな時、母の仕事自体はいつも傍で見ていましたから、この仕事、面白そうだなと思って、大学卒業後、会社を手伝いはじめました。大学時代にも少しは手伝っていましたが、ワインの勉強を始めたのは入社してからですね。


■ 少し話が脇にそれますが、ご家業としてお酒を取り扱われていたとなると、昔からお酒はたしなまれていたんですか?

Y: まあ・・・若い頃から(笑)。ただ、若い頃って、ビールにしろワインにしろ、味なんて分かんないじゃないですか(笑)。「苦い!」とか「酸っぱい!」って感じで。ちゃんとお酒を味わえるようになったのは、やっぱり20歳を過ぎてからだったと思います。


■ まぁ、そうですよね(笑)。その後、社長になられたのは・・・

Y: 4年前です。現場経験を15年くらい積み重ねて、その後、社長に就任しました。ただ、現場の大変さと経営の大変さって別物ですから、不勉強や未熟ゆえに苦労しましたし、従業員にも迷惑をかけました(笑)。

経営の勉強をしてこなかったので・・・たとえば、会社としてはギリギリのところでお給料を渡している時に、従業員から「給料が安い」と言われたりすると、なんでそんなこと言われるんだ? とかビックリして(笑)。従業員にどう説明したら良いかなど、何も知らなかったんです。



■ 先代であるお母様から、そういうノウハウは?

Y: 母が社長だった当時は、母は2代目とはいえ創業者的存在でしたから、家族経営のお店という感じで、理屈や教育より「みんなで頑張ろう」というムードを作っていました。みんなそれに慣れていたときに、私が社長になって、会社としての体制を作ろうとしながらも、うまく説明できなかったんですね。今思うと、なかなか馴染んでもらえなかったのは当然だと思います。


■ ワインに関する訓練は積んできたけれども・・・

Y: そうですね。私も従業員も、ワインに関する教育やトレーニングというのは、ずっとやってきたのですが、会社の一員としての、たとえばリーダーを育てるとか、コミュニケーションの取り方などの勉強はしてこなかったんです。当然、慣れないことを始められて、戸惑う従業員もいました。でも社長になって、経営の勉強を必死にして、みんなに理解してもらって、今ではずいぶんとマシになったと思っています(笑)。


■ ご苦労様です(笑)。今ってお酒を飲む人も減っているとか言われますけど、ワインってどういう存在だと思われますか?

Y: もちろん、お酒に弱い方でしたら、無理に酩酊する必要はありません(笑)。ただ、ワインの何が面白いかと言いますと、その後ろに物語とか歴史、文化などがとても多いことです。だからワインを趣味にすることは、一生の楽しみが増えることだと思っています。ヨーロッパだけじゃなくて世界の歴史や文化、そして日本の歴史や地理にも関係がありますから、それに興味を持つと、旅行をするにしても楽しくなりますよ(笑)。だから美味しいワインを飲んで、幸せな気持ちになれるだけじゃなくて、人生にプラス・アルファをもたらすツールですよね、ワインって・・・と思います。




インタビューと文: 三坂陽平