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■ 3月31日から4月29日にかけて、時計をフィーチャーいたします。







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Y: その方が売れますからね。僕らが始めた頃は、「撮りたい」「知りたい」から撮っていた。でもAVが儲かるネタと判った途端に、異業種からもワーッと参入してきたんです。それで業界の様相も変わりました。ピンク映画も末期はそんな感じでしたから、なんでも「産業」になっちゃうとダメですね(笑)。だから僕のやっていることなんかは、本当にニッチな分野です。


■ まぁ監督の作品は、今では本当に傍流というか(笑)。1993年から続く『ザ・面接』シリーズも、作りものじゃないでしょう?

Y: あれは、出る人はガチ。あそこに出てくる面接軍団も悪ガキがいて、上下関係があって、いじめるんだけどかわいがるみたいな、ひとつの男系村社会ですよね、僕の中では。それは自然の流れの中でそうなったから、日本人の民族性かなぁと思うんですけど・・・あとはAVなのに、笑いがある。笑いがあるのは、シリーズの初めから出演している市原克也(面接軍団隊長)の存在が大きいですね。



■ AVなのに男が主役という・・・

Y: 男が主役ってわけじゃないんだけど、女優って、長続きしないじゃないですか。イヤなことがあったり結婚したりしたら辞めちゃうわけで、続いても10年いくかいかないか。でも男優だと、平本(一穂)とかも20年くらいで引退しましたけど、長く付き合える。だから僕と男優との信頼関係がまずあって、そこに女性を迎え入れる、という。


■ あとは男と女の成り行きまかせで、と(笑)。

Y: だから『ザ・面接』なんかは時代を切り取ってるんですよね。ひと昔前は、事前面接で「本当にはイヤだけど、撮影でだったらレイプされたい」と言う子が多かった。それで面接軍団がレイプする形で撮ったら、フェミニスト集団に乗り込まれたりしたんだけど(笑)。でも今は女の方が強いし、プロ並みのテクニックを使う子もいるから、女の方が犯す形になることが多いんですよ。で、男優の方が途中でギブ・アップしちゃったりする(笑)。


■ 俗に言う「中折れ」ですね。男として、強い女性に欲情しづらいのはよく解ります。本当のセックスが成立しにくいのが、今の時代なんでしょうか。

Y: 今は多くの女性が恋愛だとか肌のぬくもりだとか、もう邪魔くさいんですね。男とセックスするより、スマホと電マでのオナニーがあれば良いんですよ。彼氏を作りたくない、セックスするにしても、セフレで良い。だから恋愛に発展しない。そういう子が多くなったのは現場で感じますし、男だってオナホールで満足しちゃうでしょ? 男も女も「快」しか求めてないんです。そういう子たちを日本は育ててきたんですよ。この流れは止まらないと思う。

食と性って、人間の根源的な営みじゃないですか。個の保存のための食、種の保存のための性。食文化は世界に誇れるかも知れませんが、性っていうのは、このままじゃ日本はヤバいなと思うくらい、どんどん荒廃してるんです。僕が「日活ロマンポルノ裁判」の時に感じたことですが、国はワイセツの概念、つまり何がワイセツなのかすら示せないんですよ。ワイセツと感じるのは主観の問題だから示せるはずがない。だから過去の判例を引き合いに出すのが精一杯だった。生物の一番根源的な営みである「性」に対して、国はあまりに無知なんですよ! 無知であるがゆえに、蔑視、軽視している。だから人々にとって、性の一番の教科書がアダルト・ビデオになっちゃってるんですよ。



■ 確かに今の日本って、性的なことに極端にフタをしたがりますね。すると、セックスに関してウブなままだから、AVのマネをすることがセックスだと信じ込んじゃう。でもAVの中身は、形だけの空虚なカラミがほとんど・・・


『いんらんパフォーマンス 中に出して!』
© アテナ映像

出演: 日比野達郎、加納妖子
加藤鷹、樹まり子

Y: そういった傾向は‘80年代後半からあって、僕ら作り手側も、マズいと感じていました。だから、当時付き合ってた本当のカップル同士ですけど、加藤鷹と樹まり子、日比野達郎と加納妖子に協力してもらって、「俺達にも責任があるんだから、本当のセックスってどんなものか、観ている人達に見せよう」と言って、『中に出して!』(1990年)を撮ったんです。好き合ってる同士の、本当のセックスを。このタイトルは、樹が加藤とのセックスの中で言った言葉なんですが、ゴムを着けずにナマでしていましたから、相当インパクトありました。当時の主流は、射精の時は腹の上に出すか、顔に掛けるかでしたから。


■ 女性の心理は解りませんが、こんなこと言われたら男は嬉しいですよね。

Y: そりゃ嬉しいですよ。だって・・・それ以上のものはないじゃないですか。この『中に出して!』はヒットしたんですよ。本当のセックスを観たい人ってこんなにいるんだ、と驚きました。でも主流にはならなかったですね。