日本語 | English

■ 10月31日~11月29日にかけて、「2017年のポップス」をフィーチャーします







Atom_feed

編集余談

諸賢にはご承知の通り、このサイトでは日本製のモノをピックアップして紹介している。映画や音楽から工芸品、家具に至るまで、自分で言うのもいささか気が引けるが、ヴァリエーションはあると思う。たぶんもっとあるのだろう。

けれど別に「日本製のモノは素晴らしいですよ、信頼できますよ」とは一言も言っていない。だってそんなのピンキリだからだ。日本製だけどダメなモノもあれば、中国製やインドネシア製でも良いモノはある。日本だから素晴らしくて中国だからダメというのはイデオロギーでしかない。つまり実際的な根拠を伴わない。よってそんなものには与しないし出来ないのである。

そこで、今回は日本製だけどダメなモノの実例を挙げてみたい。2016年の暮れの話だが、マクセルがかつてのカセットテープの復刻版を出した。「UD」のデザインを復刻したわけだが、これは日本製だった(現行の流通している「UR」はインドネシア製)。何が言いたいかはもはや語る必要もないように思うがこれがひどいシロモノだったわけである。

この復刻版「UD」、デザインを復刻とは言っても実際にはペラペラのシールを黒いカセットテープに貼りつけただけのものだったのだ。まぁそれは良いのだが(だって録音した音楽なり音声なりが聞ければ良いのだから)、問題はシールが少しの熱ですぐに剥がれることだった。

うちの場合、カーステレオがカセットに対応している。復刻版「UD」に音楽を録音し、カーステでプレイしていたら、突然キュルキュルと音がして音楽が聞こえなくなった。何が起こったのかと思って点検したら、カセットのシールがカーステ内部で剥がれて巻き込まれていたのである。

急いでカセットを取り出し、カーステ内部にカッターを差し込んで、剥がれて巻き込まれたシールも何とか回収した。しかしはっきり言って、このカセットテープは工業製品としては有り得ない低レベル品質だ。おそらく最悪の場合、カーステが壊れて、マクセルに損害賠償を求める。そんな事態だって、十分に考えられるではないか。

それはつまり、企業としての信用だとか、市場でのステイトだとかを、少なくともマクセルという会社は二の次にしているということである。どうせカセットテープなんて今時うちでしか作ってないんだから、適当にやっときゃいいんだよ。カセット好きの奴らは、それ買っちゃうんだからさ。彼らに内在するそんな思想が垣間見えた思いだった。

日本で製造しても、ダメなモノはダメなのである。もはや日本でマトモな品質の(ということは高品質のも)カセットテープが作られることはない。それが復刻版「UD」から学べる貴重な教訓だったと思う。

「ラベルはダメダメだったかもしれないけど、音楽はマトモに聞けるんだから良いじゃん」とは言わせない。パッケージを売るということは、ラベルやカセット本体の堅牢性なども含め、包括的にひとつの商品を売ることを意味する。シールがダメなら(ましてそのシールを貼り付けたのが企業側ならなおさら)それはカセットテープがダメということなのである。


(三坂陽平)