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『のび太の結婚前夜』
この映画は『ドラえもん』の最終回である

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1996年、日本のマンガを代表する漫画家、藤子・F・不二雄が、病気の為、亡くなりました。しかし彼の代表作である『ドラえもん』は、マンガは未完のままですし、アニメも映画も、彼の死後も変わりなく制作・放映されてきました。

ともすれば、『ドラえもん』は終わらないのではないか。そんな民衆の思いからか、「ドラえもんの最終回」という都市伝説が日本全国あちこちに存在します。しかし、不明瞭な都市伝説などではなく、確固たる「ドラえもんの最終回」として相応しい映画が、『ドラえもん』の連載が開始された1969年より丁度30年後の1999年に公開されました。それが『のび太の結婚前夜』です。

物語の舞台は、のび太くんやしずかちゃんが大人になった、未来の世界です。そこへ子供時代ののび太くんとドラえもんがタイム・マシンで訪れ、バレないようにこっそり覗き見するわけです。

26分という尺のせいもあって、物語の進行自体は唐突すぎるところがあり、決して手放しでベタ褒め出来る映画ではありません。しかし、それらをカバーするほど、観客への、何よりも『ドラえもん』のファンへのサービス心溢れる演出が散りばめられていて、この映画を単なるショート・ムービーでは済まされないものにしています。

ドラえもん。彼がそもそも22世紀から現代に移住してきたワケは、野比のび太というダメ少年を更生させ、より良い未来を築き上げさせるためでした。その甲斐あって、彼は初恋の相手・しずかちゃんと結婚するまでに至ります。現実には結婚が幸せとは限りませんが、生涯好きだった相手と公的に結ばれるというのは、ダメ少年だった子供の頃の彼からは考えられない快挙といえましょう。

その、のび太くんとしずかちゃんが結婚する未来の世界には、ドラえもんはいません。のび太くんは立派に成長したのであり、役目を終えた彼はのび太くんのもとから去ったのです。その具体的な描写はありません。しかしのび太くんが幸せになる、それこそがドラえもんの存在意義であり、その結実を端的に描いた本作は『ドラえもん』の最終回として、全く遜色はありません。


結婚前夜、大人のしずかちゃんは自分の両親と、大人ののび太くんはジャイアンたちとバカ騒ぎをした帰り道に小学校時代の「先生」と、それぞれ向き合い、話をします。

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、ここで描かれるのは、大きく言えば「絆の連鎖」たりえましょう。ドラえもんがのび太くんを幸せにしたように、のび太くんが誰かを幸せにする。それこそが『ドラえもん』が始点から紡いできた物語、その途上なのです。

ドラえもんは去っても、ドラえもんは存在する。そのことを明確にする、おそらくは涙を禁じ得ない、30年の重みを集約した秀逸かつ重要なシーンであることに異論をはさむ者はいないでしょう。




作品情報

・監督: 渡辺歩
・脚本: 藤本信行
・原作: 藤子・F・不二雄
・音楽: 菊池俊輔
・配給: 東宝
・公開: 1999年3月6日
・上映時間: 26分







 

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