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■ 2月28日~3月30日にかけて、「日本の伝記」を取り扱います







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『美女と液体人間』
メロドラマとは違う意味でドロドロしています

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絶対的な空の青ささえ冷たく感じる、小春日和の冬の朝。もっとも、青く見えるのは、太陽の光が大気で散乱されるからであり、この現象をレイリー散乱という。付け加えると、光源と人との距離が長くなれば、必然的にその間に存在する大気の量も増えるから、色としては青より散乱されにくい赤が人に届く。それが朝焼けや夕焼けになるわけだ。


原発事故以来、忌み嫌われる放射線だが、言うまでもなく、太陽光は電磁放射線のひとつである。放射線には、他の物質との相互作用により、こういった日常の神秘を創造するポジティヴな側面もあるということだ。蛇足ながら、晴れた日にフトンを干したらフトンがあたたかくなるのも、放射線のおかげである。

しかしながら映画、特に特撮映画においては、放射線はそのマイナス面を強調されがちで、中には荒唐無稽な設定すら存在する。強烈な放射線を浴びて液体化してしまった人間と美女とのサスペンスを描いた、アダルティ風味ただよう怪奇映画と言えば・・・『美女と液体人間』である。

麻薬密売に絡む一人の男が、小雨にうたれて唐突に消えた。消えたというか、溶けて下水溝へ流れていってしまった。実は、彼は死の灰を浴びて体が液体化してしまった「液体人間」だった。彼には、キャバレー・シンガーである千加子という女がいた。捜査陣、麻薬の行方を追うギャング、生物学者、そして液体人間が千加子を狙う。

放射線を浴びて液体人間になるというのは突飛な話だろうが、その根底にあるのは「反核」である。50年代に公開されたこの映画には、戦争の際に広島・長崎に原爆を落とされた当時の日本人の精神的外傷が、物語の裏テーマとして存在する。日本人は、自国が世界でただひとつの被爆国であること、それも理不尽な手によってそうなったことを、忘れてはならないだろう。それだけは、液体人間のように水に流してしまってはなるまい。



作品情報

・監督: 本多猪四郎
・脚本: 馬淵薫
・原作: 海上日出男
・特撮監督: 円谷英二
・配給: 東宝
・公開: 1958年6月24日
・上映時間: 87分







 

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