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■ 8月31日~9月29日にかけて、「2016年のポップス」を(今頃)取り扱います







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『正調 おそ松節』
家族のあり方を、コミカルに唄う細川たかし

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人間の社会を形成する最小単位の共同体、それが「家族」。この最小の共同体が先ずしっかりしていないと、それは即ち、社会の不安定を意味するところである。しかし、その「家族」という最小の共同体すら、日本の多くの地域において崩壊寸前と謳われる昨今。日本人は過去から学び、未来を見据え、家庭や家族といった共同体を、正しく再構築して行かねばならない。

その要ともなる「家族のあり方」の一種を学び取るに格好の材料が、演歌の中にあった。それが、演歌歌手・細川たかしが1988年3月にリリースした『正調 おそ松節』である。


『おそ松くん』といえば、ご存知の通り、赤塚不二夫のギャグ漫画だが、これはそのアニメ版の主題歌。とはいえ、歌の内容はまったくと言って良いほど、主役のおそ松兄弟には関係が認められないもの。中流エレジーとでも形容できようか、一般家庭に生きる「或る家族」がそれぞれに我が身を鼓舞する、ややコミカルな楽曲となっている。

歌詞の中に「まじめに生きちゃ馬鹿を見る」という一節があるが、これは斜に構えた若者の悪態ではない。まじめに働き、まじめに生きることしか出来なかった、愚直とも言えるほどまじめな男が、己の50年を振り返りつぶやく、自虐とプライドに満ちた一言なのだ。

ちなみに、歌詞の1番は一家の父親を、2番は母親を、3番では親から見た子供を唄った内容となっている。つまりは、タイトルとは関係なく、この詞はまさしく「家庭の在り様」を綴ったものと捉えて然るべきなのだ。

母親は「女休んだ 半世紀」と、こちらも一見には自虐的だが、その裏に家庭に我が身を捧げた覚悟と想いの高みを感じさせる物言いだ。「グチは言うまい 我が人生」と唄う彼女は、まさしく母親なのである。

作詞は秋元康、作曲は見岳章。このコンビは、翌年、あの美空ひばりの名曲『川の流れのように』を世に送り出すこととなる名コンビ。ある種のブランド志向の人にも、安心して聴いて頂ける材料を備えた楽曲ではなかろうか。


作品情報

・作詞:秋元康
・作曲:見岳章
・歌唱:細川たかし
・発表:1988年3月21日
・レーベル:日本コロムビア







 

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