日本語 | English

■ 10月31日~11月29日にかけて、「2017年のポップス」をフィーチャーします







Atom_feed
『天城越え』
人の「想い」を織り上げた、石川さゆりのスタンダード

LINEで送る

人が人に対して掛ける呪詛というのは、一体どれほどまでに有効なのだろう。翻して言えば、人は他人から掛けられた呪詛より、どれくらい逃げていられるのだろうか。石川さゆりの大ヒット・ソング『天城越え』に際しては、そんなことを考えざるを得ない。


石川さゆりは1973年にデビューした演歌歌手(デビュー当時はアイドル歌手路線であった)であり、デビュー当初こそヒットに恵まれなかったものの、1977年にリリースした『津軽海峡・冬景色』『能登半島』がスマッシュ・ヒットを記録し、一気にメジャー・演歌歌手に成った。プライベートでは1981年には結婚し、1984年には長女を出産。そんな順風満帆な生活を送る石川さゆりが1986年にリリースしたのが『天城越え』であった。

天城越えというのは静岡県の天城峠を越えることを指すが、それはそれとしてこの曲、唄う難易度は高く、当時のプロダクションは「石川さゆりだからこそ唄える歌を作る」という意を込めたと言う。また「♪あなたを 殺していいですか」などという凄絶な女の情念を描いた歌詞は、さる2010年に亡くなった作詞家・吉岡治の筆によるもの。

吉岡曰く「幸せな表現者は、いいものを表現出来ない」ということで、当時結婚して子宝にも恵まれ幸せのど真ん中にいる石川さゆりに対して、「奈落に落ちろ」と言わんばかりに、これでもかというくらい「不遇」な女を描いた詞を提供したのだとか。そんなプロダクション・サイドの想いが実を結んだか、1989年石川は離婚し、現在に至るまで独身を通している。

そういったある種の呪詛が込められた『天城越え』は大ヒットを記録し、現在でも紅白で彼女の代表曲として歌われたり、2008年には野球選手・イチローが打席に立つ際に掛ける曲として選んだり、スタンダードの座を確立している。

まことに、様々な人々の様々な思いを織り上げた佳曲であると言えよう。


作品情報

・作詞:吉岡治
・作曲:弦哲也
・歌唱:石川さゆり
・発表:1986年7月21日
・レーベル:日本コロムビア







 

『星影のワルツ』
我々が夜空の星に想いを馳せるための演歌バラッド

『夜桜お七』
坂本冬美が桜吹雪をバックに繰り広げる、儚い恋愛劇