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『NORTH BIRD』
まばゆさに痺れる、寺久保エレナのデビュー・アルバム

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ポップ・ミュージックというものが、ある程度の反復性を要する(つまり全く新しい類の音楽はポップスとしては機能しない)音楽であるならば、ジャズという音楽は反射神経とセンスを非常に要する音楽ということが出来る。ということは、経験や環境等といった要素を除外すれば、後者はともかく前者(反射神経)は高齢者より若人の方が優れていてしかるべきだろう。そこへ優れたセンスなんてものを持ちあわせた若人は、そりゃあ逸材というほかない。

そんな逸材たるジャズ・アルトサックス・プレイヤーの1人、寺久保エレナが2010年に発表した『ノース・バード』は、彼女のデビュー・アルバムでもあり、高校生時代のプレイを収録したものだ。全編伊藤八十八プロデュースによるもので、ニューヨークにて2010年3月28・29日の2日間、全10曲を録音。

NORTH BIRD
2010年6月23日 発売
KING RECORDS

01. イエス・オア・ノー
02. 黒水仙
03. ステイブルメイツ
04. マイ・フーリッシュ・ハート
05. ノース・バード
06. イッツ・ユー・オア・ノー・ワン
07. いつか王子様が
08. ティム・タム・タイム
09. ライク・ザ・サンライト
10. A列車で行こう
タイトル・チューンでもある「ノース・バード」は日本ジャズ界のオールド・マスターでもあるジャズ・ピアニスト山下洋輔が彼女のために書き下ろした、北海道出身の寺久保にこそ相応しい曲だ。彼らは前年(2009年)に共演しており、寺久保の才能にホレ込んだ山下が曲のプレゼントを申し出たという。そのミディアムな美しいメロディに、寺久保のまばゆいばかりのサックス・プレイが映える。

その他にもカヴァー曲、オリジナル曲、すばらしさに震えるほど色とりどりの表情を見せてくれる。白眉は、「マイ・フーリッシュ・ハート」等のバラッド・ナンバーにおけるプレイだろうか。音がいいというのもあるが、高校生でこの情感、この渋みは財産としての「生まれつきのセンス」を感じ、痺れさせてくれる。

惜しむらくは、ジャケット・デザインが盤のすばらしい音楽に匹敵していない、というところか。そのあたりは次作『ニューヨーク・アティテュード』でいくらか改善されたが。

とまれ、彼女は現在海外に留学中であるものの、すでに3枚目のオリジナル・アルバムのレコーディングの報せもあり、今夏には山下洋輔のバンド・メンバーとして共演も予定されている。未来への期待を感じさせてくれる貴重な存在なのだ。寺久保エレナは。そして、彼女のファースト・ステップである『ノース・バード』は。





 

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