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『9.5 カラット』
井上陽水、36歳。職業: 歌手

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日本では楽曲や本人の知名度もさることながら、物真似の対象としても定番の地位を築いたポップス界の巨人と言えば、そう、井上陽水である。


9.5 カラット
1984年12月21日

フォーライフ・レコード


01. はーばーらいと
02. ダンスはうまく踊れない
03. TRANSIT
04. A.B.C.D. 
05. 恋の予感
06. いっそ セレナーデ
07. 飾りじゃないのよ涙は
08. からたちの花
09. ワインレッドの心


青い下線は執筆者推薦曲を表しています。


あの甘く、まろやかな、柔らかい、変態的な歌声は一体いかにして発せられるのか。声紋・音響研究者、鈴木松美氏によると、「口の中で共鳴する場所が多い」ために、キーを低く歌っても、高く澄んだ声に聞こえるという。他にも、腹式発声や音程がしっかりしているのが特徴で、「歌手として基本的なことですが、これができていない方も多い」とか。

そんな井上陽水の歌ゴコロ、つまり歌手としての技量とセンスをひときわ味わえるアルバム。1984年にリリースされた『9.5 カラット』を表すなら、そういった所だろう。

1977~84年にかけて、沢田研二や安全地帯、中森明菜など、他の歌手に提供した楽曲のセルフ・カヴァー集なわけだが、この時期、井上陽水はヒット・メーカーだった。ヒット・チャートの上位が、井上陽水の手による楽曲で独占されたということもあったくらいに。それは、ここに収録されている楽曲群のクオリティを、ある程度は保証していようか。

言い換えれば、ここにある歌達は、オリジナルの歌い手の印象が色濃く世間に根付いていたわけで、それをカヴァーするというのは、作り手とはいえども、ハードルはかなり高かったはずだ。

しかし井上陽水はそのハードルを越えた。その卓越したヴォーカルで、見事に全楽曲を「陽水色」に染め上げ、我々に提示してみせた。そしてアルバムの売上は、当時としては破格的な数字ともいえるミリオンを突破した。

創作された時期はバラバラだし、作詞の一部はユーミンや糸井重里、松本隆が、作曲の一部は玉置浩二が手掛けている。しかしそんなことは気にとめない限り、自然と井上陽水の世界にどっぷり浸れる。それも道理だろう。ここにあるのは歌手としての井上陽水、その当時の真髄に他ならないのだから。





※参考文献:
片貝久美子(2009)「声紋が物語る“陽水声”の魅力」『別冊カドカワ 総力特集 井上陽水』p.152, 角川マーケティング


井上陽水 オフィシャルサイト







 

『満足できるかな』
その狂気は、いつの世も我々の隣に在る

『evergreen』
That’s My Little Lover’s Happiness