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『Guilty Pleasure』
山中千尋ではなく、アンサンブルを楽しむ佳作

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こういう場って、CDの感想だけ書けばいいものかもしれませんが、やはり公に提示する以上、「今何を書くべきか」を考えたりする時があります。たぶん山中千尋の『Guilty Pleasure』もそういった考えから作られたのではないか、と思います。「今何を演るべきか」って。


『ギルティ・プレジャー』
2016年7月13日発売

Universal Music

1. クルー
2. ギルティ・プレジャー
3. コート・イン・ザ・レイン
4. ライフ・ゴーズ・オン
5. ニアネス・オブ・ユー
6. アット・ドーン
7. ヘッジ・ホップ
8. モーメント・オブ・イナーシャ
9. ギルティ・プレジャー・リプライズ
10. ミーティング・ユー・ゼア
11. サンキュー・ベイビー





ジャズ・ピアニスト、山中千尋が『Guilty Pleasure』をリリースしたのは2016年の夏。この前年、つまり2015年の秋に山中がリリースしたのはベスト・アルバムでした。一応『シンコペーション・ハザード』という新作も同年夏には出していましたが・・・

ベスト・アルバムなど、大半のジャズ好きからすれば邪道もいいところです。が、そこはそれ、メジャー・レーベルの流儀というやつなのでしょう。経緯はどうあれ、山中千尋のベスト盤は出てしまった。つまりメジャー進出後の山中千尋が、そのキャリアが、そこで包括されてしまったのです。

山中千尋は考えたはずです。今までのキャリアが包括された今、自分は作品として次回、どんなものを提示すべきか、と。そして提示されたのが『Guilty Pleasure』なのです。内容は、ジャズの王道を行く現代ジャズです。つまり、山中千尋の得意技を意図的に封じていると言えましょう。

山中千尋の個性のひとつに、「変態的なアレンジ力」がありました。なんでそうなっちゃうの、と言わざるを得ないほど、肉食女さながらに楽曲をレイプして、しかし仕上がりは大変に素晴らしい。その個性がここでは封印されています。

では、今そこに挑んだ理由はどこにあるのか。ジャズ・ピアニストと言っても、ピアノ単体で成立するもんじゃありません。ベースやドラムスがあってこそのピアノです。彼女が自覚したのは、長年付き合いのあるベースとドラムスとの、唯一無二の強固なアンサンブルだったのではないでしょうか。


「今ならこのトリオで王道のジャズをやる意味がある」と、山中千尋は感じたに違いありません。

つまり『Guilty Pleasure』において耳を傾けるべきは、ピアノより、楽曲より、そのアンサンブルやグルーヴなのです。料理で言えば、形式や見た目よりも素材同士のケミストリーをこそ楽しめる。『Guilty Pleasure』とは、そういったア・ラ・カルトなのかもしれません。

王道のジャズですから、ジャズや山中千尋の初心者も最初の1枚として聴きやすい作品。実はこのオリジナル・アルバムが、ベスト盤へのアンチテーゼになっているのです。



山中千尋 公式サイト






 

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