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『君の名は。』
このサントラにレコード会社とユーザーの逕庭が見ゆ

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ラッドウィンプスの『君の名は。』は『シン・ゴジラ』とともに2016年を代表する映画『君の名は。』の公式サウンド・トラックである。劇中の歌、劇伴、すべてをラッドウィンプスが手掛けている。このうち歌詞が付けられた、いわゆる歌モノは4曲(「なんでもないや」の別ヴァージョンを含めるなら5曲)。中でも「前前前世」は、星野源の「恋」と並んで、2016年の顔と言えるほどのポピュラリティを獲得した。


『君の名は。』
2016年8月24日発売

EMI Records

01. 夢灯籠
02. 三葉の通学
03. 糸守高校
04. はじめての、東京
05. 憧れカフェ
06. 奥寺先輩のテーマ
07. ふたりの異変
08. 前前前世(movie ver.)
09. 御神体
10. デート
11. 秋祭り
12. 記憶を呼び起こす瀧
13. 飛騨探訪
14. 消えた町
15. 図書館
16. 旅館の夜
17. 御神体へ再び
18. 口噛み酒トリップ
19. 作戦会議
20. 町長説得
21. 三葉のテーマ
22. 見えないふたり
23. かたわれ時
24. スパークル(movie ver.)
25. デート2
26. なんでもないや(movie edit.)
27. なんでもないや(movie ver.)


青い下線は執筆者推薦曲を表しています。

Arrangement: RADWIMPS
全作詞:野田洋次郎

映画が大ヒットしたこともあり、今作はなんとラッドウィンプスの自身最大売上を更新。サントラでありながら40万枚を超える大ヒットを記録した。オリコン週間チャートでは2週連続1位を獲得。その後もトップ5内に長くランクインするなどロング・ヒットの様相を見せた。

とはいうものの、おそらく購入者の大多数の目当ては劇伴ではなく、「夢灯籠」などの歌入りの楽曲である。これらの楽曲を正規ルートで手に入れるには、ダウンロードに頼るか、今作を購入もしくはレンタルするしかないからだ。それは取りも直さず、CD不況だなんだと言われながらも配信やレンタルで済まさずに盤を求める人が何十万単位で存在したということである。そしてここにレコード会社とユーザーのズレが見られると言えるだろう。

おそらく映画自体、公開前はあそこまで大ヒットするとは思われていなかった。当然、ラッドが手掛ける楽曲もそこまでヒットするとは思われていなかったはずである。だからレコード会社は「前前前世」をシングルに切ろうなどとは夢にも思わなかった。もしシングル化していれば(単価がアルバムより安いぶん)50万前後のヒットにはなったはずなのに。

ユーザーにしても、はっきり言って劇伴はおまけ程度でしかないだろうから、歌モノ4曲をシングルで切ってくれた方が、コストもかからず、よほどメリットがあったはずなのである。

実際、今作の大ヒットを受けてであろう、今作の歌モノ4曲を英語化したものが2017年2月にシングルとしてリリースされた。しかしすでにブームは沈静化しており、また同じ楽曲とはいえ英語版にはそれほどニーズがないであろうこともあって、2万枚程度の売上に終わった。完全にレコード会社の読みが甘いというか、世間との逕庭が露呈した形である。

大上段から物申すようで恐れ入るが、レコード会社の使命はただひとつ。良い音楽を作り、それを一人でも多くの人に聴いてもらうようにすることだろう。昨今、シングルは売れないしレンタルでも取り扱いが減るしで、レコード会社はシングルを切るより配信での販売を優先している。その傾向自体は仕方ないのかもしれない。しかし前述のように、まだ盤は多くの人に求められているのだ。自分達が作ったモノが良い曲だ、ヒットするはずだ、という矜持があるのなら、恐れずにシングルを切ってほしい。そして、それを惜しみなく宣伝してほしい。音楽ユーザーの一人として切に願う次第である。


RADWIMPS OFFICIAL SITE





 

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