1999年初めにバンド「黒夢」を活動停止させたリーダー・清春は、同年夏、後期黒夢のサポートギタリストを務めた坂下と共に、自分の次のバンド「サッズ」を結成・デビューさせました。「黒夢」がボーカルとベースのみの2ピース体制だったのに対し、「サッズ」がギターとドラムを加えた4人体制で展開されたわけですが、これは清春の中にあった<バンド表現>の完成を目指してのものだった、と推し量れましょう。
黒夢ももともとは普通のバンド体制をしいていましたが、次第にメンバーが抜けてゆき、2人に。本来なら、音楽性という面では、人数が少ない方が自由に音楽を作れるかと思いますが、清春はあくまで<バンド表現>にこだわりました。
初期のサッズは攻撃性を前面に出したパンク・ワナビーなスタイルで。2作目では、プラス・耽美性という形をとっていました。そして、この頃から、(初期黒夢のように)ヴィジュアル系としてのルックスを、サッズのイメージに清春は盛り込みだしました。
サッズになってからもメンバーチェンジは繰り返されましたが、それでも清春の「4人で」というこだわりは貫かれました。そしてついに清春は<理想のバンド>を手に入れ、自身のリリックやボーカルさえも楽器の一部として扱うがごときアルバムを発表します。2001年に発表された『ザ・ローズ・ゴッド・ゲイヴ・ミー』です。
ギラギラした外見と、ヘヴィーな音楽性、けれど決して生ぬるいゴシック耽美系ではない。何よりも今までと顕著に違う点は、サウンド重視のためのほぼ英語詞というスタイル。ここで清春が理想としていた<バンド表現>は一旦の実現を見たのでしょう。このアルバム・ツアー以降、バンドはメジャーレコードからの離脱やメンバーの怪我、ステージでのトラブルなどが目立ち、しっちゃかめっちゃかになります。そして2003年、自然にサッズの活動はなくなり、清春はソロへ転向し現在に至ります。
『ザ・ローズ・ゴッド・ゲイヴ・ミー』はサッズの第3作目のアルバムですが、このアルバムを実現するためにこのバンドはあったと見ていいでしょう。2010年に清春以外のメンバーは総入れ替えでサッズは活動再開しましたが、再開ライヴ(下動画参照)でもこのアルバム曲が重要な位置を多数占めていましたから。清春がこだわり続けた<バンド表現>の頂であり、サッズ≒『ザ・ローズ・ゴッド・ゲイヴ・ミー』なのです。