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■ 6月30日から7月30日にかけて、1984年のポップスをフィーチャーします







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『古今集』
薬師丸ひろ子にかかるコンセンサス

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『古今集』
1984年2月14日発売

東芝EMI

01. 元気を出して
02. つぶやきの音符
03. トライアングル
04. カーメルの画廊にて
05. 眠りの坂道
06. 白い散歩道
07. ジャンヌ ダルクになれそう
08. 月のオペラ
09. アドレサンス(十代後期)
10. 探偵物語
11. すこしだけ やさしく
12. セーラー服と機関銃
13. 探偵物語(ストリングス・ヴァージョン)

青い下線は執筆者推薦曲を表しています。

作詞:竹内まりや、来生えつこ、湯川れい子、
   大貫妙子、阿木燿子、松本隆
作曲:竹内まりや、南佳孝、大野克夫、
   大貫妙子、井上鑑、大瀧詠一、来生たかお
編曲:椎名和夫、井上鑑、大村雅朗、鷺巣詩郎、
   清水信之

通常盤は1~9曲目までを収録。
2005年、2013年の再発売の折には、
上記のように13曲収録となっている。

最近は薬師丸ひろ子がコンサート活動に積極的であるとのこと、まずはご同慶の至りである。というのも、私がティーンの頃は、彼女が活躍するのは女優としてばかりで、テレビで唄う、あるいはコンサートを開くなんてことはなかった。なかったと思う。彼女は80年代に歌手としても活躍していた(らしい)が、少なくとも私はそれをリアル・タイムで体験していない。

では、私たちの世代(という世代論があまり好ましくないのは分かっているけれど)にとっての「薬師丸ひろ子」は誰か。そう考えると、いなかったのではないかと気が付く。替わりがきかなかった。女優として銀幕デビュー、その後歌手としても活動し、その両輪にて透明感と存在感をアピールし、人気を博した。90年代におけるそんな存在を、私は急には思い出せない。広末涼子? 森高千里? 違うなぁ。彼女たちには清楚だとか溌剌だとかは求められていたかもしれないが、透明感はなかったと思う。

薬師丸ひろ子は、角川春樹に見初められて、1978年に『野性の証明』(角川映画)に出演、女優デビューを果たした。角川に見込まれた彼女は、その後も普通の学校生活を送りながら、俳優としてのキャリアも重ねていった。やがて1981年に主演した『セーラー服と機関銃』の主題歌を薬師丸が唄うことになる。映画と同タイトルの歌はシングル・ヒットを記録した。

余談ながら、私が初めて「セーラー服と機関銃」という歌を聴いたのは、長澤まさみが2006年に「星泉」名義でリリースしたシングルであった。それが薬師丸のカヴァーであったとは、ずっと後になってから知った。

話を薬師丸に戻そう。おそらく彼女が唄った「セーラー服と機関銃」は当初、映画のサントラに入れる特典(つまりサントラの販促材料)くらいにしか想定されていなかったはずである。彼女はまだティーンネイジャーであり、歌手のキャリアもろくすっぽなかったのだから。ところがこれがヒットした。いや、販売枚数などはこの際どうでもいい。なんだ、この唄は。関係者はそう思ったはずである。そこには他の誰も真似できない「薬師丸ひろ子」がいた。

透明感? もちろん透明感を売りにしたアイドルは薬師丸以前にもいた。日本のアイドルの元祖と言われる南沙織などはまさにそうであろう。しかし薬師丸が持つそれには、強烈な存在感が同時的に帯同されていた。言い換えるなら、彼女は巫女のようであった。一人の女性がそこにいるのだけど、彼女の口からは「別の誰か」しか表現されない。そこに「彼女」はいない。そして(逆説的ながら)、そうであるがゆえにシャーマンとしての彼女の存在感は、疑う余地もなく、人々の視覚と聴覚に、ほぼ唯一無二的にインプリントされる。そういった個性は前例がなかったと思う。

ポップスの制作陣は薬師丸に惚れ込んだ。彼女にこんな歌を唄わせてみたい。唄ってほしい。そこで彼らは竹内まりや、阿木燿子、大瀧詠一、松本隆など、一流ソング・メイカーを招聘し、薬師丸のファースト・アルバム『古今集』が制作されるに至った。そう思っている。彼らのそういった共通認識、コンセンサスが底流になくては、『古今集』はこうはならなかったろう。アルバム・コンセプトは「薬師丸ひろ子」である、と言うべきか。

なお、今作での「セーラー服と機関銃」は、オリジナル・ヴァージョンではなく、井上鑑の編曲によるもの。オリジナルを手掛けた星勝のオリエンタルな、ムーディーなテイストは最小限に抑えられ、井上が得意とする、バンドによるポップスといった風に仕立てあげられている。


薬師丸 ひろ子|Victor Entertainment







 

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