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『宇宙図書館』
宇宙的風景の喚起と、文学性と、老いと

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あらかじめ断っておく。松任谷由実(以下、ユーミン)の『宇宙図書館』を聴く折、私が参考文献としたのは、彼女の夫であり音楽パートナーでもある(当然、今作にも深く関わっている)松任谷正隆へのインタビュー本『僕の音楽キャリア全部話します』(新潮社)のみである。それ以外の媒体や本人へのインタビューなどは一切参照していない。


『宇宙図書館』
2016年11月2日発売

ユニバーサル ミュージック

01. 宇宙図書館
02. 残火
03. Sillage~シアージュ
04. AVALON
05. あなたに会う旅
06. 星になったふたり
07. 月までひとっ飛び
08. Smile for me
09. 私の心の中の地図
10. 君(と僕)のBIRTHDAY
11. 気づかず過ぎた初恋(Extra Winter Version)
12. GREY


青い下線は執筆者推薦曲を表しています。

全作詞・作曲:松任谷由実

ユーミンの38枚目のスタジオ・アルバム『宇宙図書館』。シュールなタイトルである。宇宙に図書館があるものかと。しかし今までもどこかシュールというか風変わりなタイトルを用いてきた履歴がユーミンにはあるので━━たとえば『昨晩お会いしましょう』や『水の中のASIAへ』など━━、ユーミンにいくばくかでも馴染みのある人には、そこまでシュールには響かないかもしれない。

この奇妙なタイトルは、「気づかず過ぎた初恋」が映画「リトルプリンス 星の王子さまと私」(2015年)の主題歌に採用されたことに端を発する。星の王子さま、だから宇宙をイメージした。そのイメージがそのままアルバムの方向性になったわけである。

今作で「月までひとっ飛び」以外の全曲を編曲している松任谷正隆は、「良い音楽というのは風景を見せてくれる」を持論としている。つまり音楽面で、なにかしらの宇宙的(SF的と言ってもいいかもしれない)風景を想起させる工夫が散りばめられているということだ。松任谷正隆がプログラミングした、つまり人間のミュージシャンを極力採用していない打ち込みの曲が3曲もあるのも、宇宙的風景をリスナーに思わせる狙いがあってのことなのかもしれない。

ユーミンの歌詞も相変わらず文学的要素を包含しており、アレンジメントと相俟って、風景的なものを想起させてくれる。SFポップとでも言おうか。昭和末期に小林麻美へ提供した「GREY」のセルフ・カヴァーでシメる構成も素晴らしいと思う。

惜しむらくは、60代になったユーミンの声の変化である。端的に言えば━━生物である以上、当然のことながら━━声がおばあちゃんになっているのである。だからこそ響く曲(歌詞)というのもある。しかしその逆に、加齢をこそ惜しまれる点があるのもまた事実なのだ。

具体例をひとつ。「私の心の中の地図」の最後の「から」の部分は、おばあちゃんな声で張り上げずに、赤ん坊にささやきかけるようにそっと唄ってほしいと個人的には思う。しんみりした良い曲なのに、最後のあのパートでどうしてもズッコケてしまうのだ。このあたり、30年前のユーミンだったらもっと違ったのではと、詮無きこととは知りながらも、どうしても思ってしまう。


松任谷由実 オフィシャルサイト





 

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