牡蠣(かき)の産地といえば、日本人がパッと思い付くのは、広島県、宮城県、岡山県・・・あたりではないでしょうか? 確かにこの3県は日本国内において、牡蠣の水あげ量ベスト3です(2009年度)。ちなみに4位は岩手県です。
今回のテーマはビール。「ビールと牡蠣に何の関係が?」と思われる方もおられるかも知れませんが、コレが大いに関係あるんです。今回ご紹介するのは、「牡蠣の黒ビール」。文字変換で「下記の」「夏季の」と出てしまうなど、困った感のあるネーミングですが、それは品質には関係ありません。岩手の「世嬉の一酒造」で作られる、個性的な黒ビールです。
かの皇帝・ナポレオンも牡蠣を好んで食べていたという言い伝えがあります。牡蠣は、そもそも明治時代に欧米から日本へ「食べる文化」が輸入された食材です。したがって、牡蠣を使ったビールというのも、元ネタは欧米なのです。20世紀前半には、英米などで牡蠣のビール(スタウト)は散見されたそうですが、いつしかバッタリと途絶えました。それを、三陸牡蠣を使って復活させたのが、この「牡蠣の黒ビール」にあたるワケなのです。
話は飛びますが、ひと言で「本当の地ビールとは何か」というものを説明するなら、それは「大手が作らない、その土地の「地の利」を活かした、個性的なビール」です。そういったところでもこの「牡蠣の黒ビール」、日本の地ビールの代表的存在としても、間違いは無いでしょう。2007年には、インターナショナル・ビア・コンペティションにて銅賞に輝いたのも道理ではありませんか。
牡蠣に関しては「食中毒が心配です」と言う声もあるかも知れません。事実、「アタる」食材として名高いですからね。しかしながら、それらの多くは非加熱状態での摂取、つまり加熱することなく生で食べての事例です。「牡蠣の黒ビール」の醸造過程においては、発酵前にホップと共に牡蠣を煮沸していますので、ご安心ください。