ローカルであることで何が問題かというと、人口が少ないことだ。自治体にとってはこれが死活問題になるし、産業面でも影響は大きい。人口が少なければ、いきおい、何の生産にしても小規模になりがちだ。1819年から続く酒蔵「はつもみぢ」にしても、年間出荷量は200石以下である。ただしこれは、「地方だから」などといった単純な理由からではない。
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およそ200年の歴史からすれば10分の1、20年程度のブランクかと思われるかもしれないが、実際に20年は決して短くはない。機材も土地も簡単には用意できない彼らの蔵は、とても小さい。これで大規模な生産は、物理的に不可能だろう。しかしその分、造る酒に原田氏の心が行き届いているのである。そのクオリティを認められて、近ごろは米国での取り扱いも増えてきているのだとか。
「はつもみぢ」の現在の代表銘柄は、「原田」。原田氏が造る「原田」である。山口県ならではの酒にしたいと、使われる酒造好適米・山田錦は、すべて山口県産。規模は確かに小さくとも、名実ともに山口県産の日本酒である。単に「地酒」と形容して片付けるにはもったいないほどの日本酒としてのクオリティは、生産規模で判断するには惜しすぎるだろう。