喜多屋は創業当時こそ清酒(日本酒)メーカーだったが、1963年、焼酎造りに参入。喜多屋という珍しい名前は、もともとは「酒を通じて、多くの人を喜ばせたい」という志から付けられたというから、初心を忘れず、時流に乗ったということだろう。タコの足のように手を広げたい一心で、闇雲に、というわけではない。

「天の美緑」
アルコール: 25度
価格: 880 円( 720 ml )
蒸留方法: 減圧
原料: 米、米麹(白)、八女茶(煎茶・玉露)
「飲み心地はスッキリしている」と先述したが、『天の美緑』は減圧蒸留で造られている。焼酎造りにおける蒸留方法には常圧と減圧があり、常圧は従来方式。減圧は、1970年代に生まれた手法で、コゲ臭さなど、それまで人々が焼酎を敬遠していた主な理由を排除し、焼酎を飲みやすいものにした蒸留方式だ。実は、喜多屋は焼酎造りに減圧蒸留を取り入れたフロンティア的存在でもあったのだ。
飲みやすいということは、翻して言えば、原料の風味が損なわれているわけ? そんなの美味しいの? と疑問に思うかもしれない。確かに、今も常圧方式で造られる焼酎は、その原料の風味を活用していることを売りにしたものが多く、その姿勢を支持する声もある。
しかし無色であることが証明しているように、これは八女茶を原料に用いてはいるが、お茶ではない。あくまで焼酎である。何事にもバランスが大切であり、『天の美緑』においては、減圧方式がベストなのである。逆に濃いお茶(八女茶)の香味を備えた焼酎など、飲みにくいような気もする。蒸留方式で優劣が決まるわけではない。
おすすめの飲み方は、水割りやお湯割りもいいが、お茶の香りを存分に味わうためにもロックで。スッキリした飲み心地なので、食中酒としてもイケる。