こんにちは皆さん。今回のテーマは「リュック」です。最近ではバックパックとかデイパックとも言われますけど、私の世代(八〇年代生まれ)にはやはり「リュック」が一番馴染み深い呼び名かなと思います。リュックサック。調べてみると、この「リュックサック」というのはドイツ語みたいです。対して、バックパックは英語。意味するところはどちらも「背負う袋」です。ちなみに「デイパック」はバックパックの小型版という意味だそうで、これはトマトとミニトマトみたいな感じなんでしょうね。
前世紀の日本では、リュックは学生が持つもの、あるいはレジャー用品という位置づけでした。だからいい歳したスーツ姿の大人が、会社にリュックで通勤するなんてことは、そうはあり得なかったんです。でも今世紀に入って以降、ビジネス・シーンのカジュアル化が進んだためか、半袖シャツを着たサラリーマン、スニーカーで通勤するサラリーマン、リュックを背負って通勤するサラリーマンなどは当たり前に見られるようになりました。それが良いか悪いかは別にして、こうなると「サラリーマンが使っていて恥ずかしくないリュック」というのもそれなりに求められるはずです。
ということで取り上げるのが、「ペッレ・モルビダ」の「メイデン・ヴォヤージュ」というシリーズです。名前だけ聞くと「海外のブランドかな」と思う人も多いでしょうが、れっきとした日本のブランドです。二〇一二年に設立されたブランドなので、キャリアは比較的浅めではありますが。

Maiden Voyage MB060A (Greige)
重量:940 g
サイズ:H42×W30×D12 cm
価格:税込67,100円(2026年7月時点)
「ペッレ・モルビダ」はファッション関連の卸商社ウエニ貿易(一九八九~)が、団塊ジュニア世代のファッション・ディレクター干場義雅(一九七三~)をクリエイティヴ・ディレクターに迎えて設立したブランドです。要するに、ファクトリーブランドではなく、海外のファッションに精通した人達によって構えられた、ファッション性に重きを置いた「ファッションブランド」なわけです。
干場とか、あるいは以前取り上げた『
服が、めんどい』の著者大山旬などもそうですが、ファッション沼にはまり込んだ人達ってイタリアにかぶれるケースが多いですよね。イタリアの伊達男への憧憬を隠せないというか、隠すつもりもないというか。この「ペッレ・モルビダ」もご多分に洩れずイタリア語で、意味は「柔らかな肌、革」なんだとか。公式サイトのブランド・コンセプトの説明によると、「ブランドの根幹となるオリジナルシュリンクレザーを開発する際、豪華客船での恋物語を描いた映画『めぐり逢い』で、圧倒的な気品と美貌を見せた主演女優デボラ・カーの柔らかな肌をイメージした」らしいです。あの映画って、アメリカの映画だった気がするんですけど。
ここまでの説明でそれとなく感じ取っている人も多いかと思いますが、個人的にはこのブランドって、なんとなく信用しきれないんですよね。良くも悪くも伊達感が前面に出ている感じがするというか。

Maiden Voyage MB060A (Black)
重量:940 g
サイズ:H42×W30×D12 cm
価格:税込67,100円(2026年7月時点)
これが「メイデン・ヴォヤージュ」のリュックなんですが、見た通りレザー製のリュックです。この「メイデン・ヴォヤージュ」は、公式サイトの説明によると、「『完成した船(バッグ)が世に出ていく』というイメージから処女航海の名をつけた、ペッレモルビダのスタンダードライン」ということですが、パッと見、華がありますよね。
表面には兵庫県姫路市で開発されたシュリンク・レザーを使っていて、エレガントな光沢は保ちながらも過度ではなく、レザー商品にありがちな「いかつい感じ」になっていない。優れたバランス感覚だと思います。内装に使われているのはマイクロライト・スエードで、こちらもクールな優美さがあります。これなら大人がビジネス・シーンで使っていても、そんなに違和感はないんじゃないでしょうか。

材質だけではありません。使い心地にもちゃんと配慮されています。内側にはタブレットやノートPCを収納するスリーヴがちゃんとありますし(もう今やリュックにPC収納用スリーヴが付いているのは当然になっていますよね)、ペン用のホルダーも付いています。背中に接する面にはメッシュ素材が使われていて、なるべく蒸れにくいようにとの配慮もしっかりされています。

研修や旅行などで、十何人分かのカバンを部屋の片隅(あるいはテーブルの上など)にまとめて置くという場合も、レザーのリュックなんて珍しいでしょうから目立つと思います。フォルムやカラーはオーソドックスですが、素材感が他のリュックと一味違うので、「ええと俺の荷物はと、あ、あったあった」とすぐ見つけられるはずです。
「なんだ結構よさそうじゃないか、それのどこが伊達なんだ」と思われるかもしれませんが、私が疑っているのは「どれくらい持つか」です。
経験済みの方も多いでしょうが、リュックって使っているうちに遅かれ早かれ型くずれを起こします。愛用していればしているほど早く型くずれを起こす。言い換えれば、ある程度型くずれするであろうことを前提にしてリュックって設計されているはずなんです。私はカバン職人ではないので、あくまでも推測ですけど。でもこのブランドのリュックって、新品の段階でのエレガントさを前提に作られている気がするんですよね。
牛革製のリュックですから、決して安くはありません。平気で数万円します。リュックにそんな金額はとても出せないよという人も多いでしょう。個人的にも、これだけ出すんだったら最低十年以上は持ってほしいと思います。でもこの洒落たエレガントな佇まいが、果たして何年もそのままで持つのかと。私はそこを疑ってしまうのです。
別言すれば、耐久性とか堅牢性とかコストパフォーマンスとか、そういう小市民的なことを気にしない本当に余裕のある洒落た大人にこそ、このリュックは相応しいのかもしれませんが。