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■ 5月31日から6月29日にかけて、「日本のカバン」をフィーチャーします。







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ポーター
吉田カバンの看板

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こんにちは皆さん。今回のお題は吉田カバンの「ポーター」です。日本の成人で多少なりともカバンが好きという方なら、十中八九ご存じであろうブランドだと思います。ではあるんですけど、個人的にはこのブランドって、別の製菓会社の商品とわりと似たところがあるんじゃないかなと思うので、今回はその近似性を軸に話を進めます。

今年(二〇二六)の四月から五月、カルビーのポテトチップスについての記事を二つ草しました。その二つ目の記事を脱稿した直後に、カルビーが自社製のポテトチップス十四種類のパッケージを、カラーからモノクロに変更して販売するというニュースが全国に配信されます。ぶっちゃけ、面食らいましたよ。「えっらいタイムリーなタイミングで来たなぁ」って。



カルビー ポテトチップス うすしお味
内容量:160 g


カルビーによると、変更の理由は「当今の中東情勢を受けてパッケージ印刷に要する材料を十分に確保するのが困難と見込まれるから」ということでした。この発表を「んなこたぁないだろう」と訝ったのか、農林水産省などが同社に対し、事情聴取を行うと表明するのですが、国のこの対応は、個人的には分からなくもありません。リソース不足が予想されるから白黒にするというなら、どうして全商品でそれをしないのか? なぜ十四品目に限定するのか? その根拠がカルビーからは説明されていないからです。

そのヒアリングが具体的にどうだったのかは(差し当たり)続報がないので、私には分かりません。ただ今回の件を見る限り、カルビーが一つの曲がり角に差しかかっているのは間違いないと思います。そうして、私はふと「カルビーと吉田カバンって、同じような道を辿って同じような境遇にあるのかもな」と思ったのです。

カルビーと吉田カバン。どちらも戦前から営まれてきた個人商店をベースに、戦後に設立された株式会社であるところは同じです。もちろん扱う商品は食料品とカバンという、異なるジャンルではあるわけですけど。

ここではカルビーがどういう会社かについて再説はしません。前掲の記事で、さんざん語りましたから。なので、話は吉田カバンです。



ポーター大阪店があるグランフロント大阪南棟
File: GRAND FRONT OSAKA TOWER-A.jpg
from the Japanese Wikipedia
(撮影:2020年1月12日)

吉田カバンというのは俗称で、会社名は株式会社吉田といいます。創業者は、一九〇六年神奈川生まれの吉田吉蔵。彼は十代前半で上京し、上野の鞄工房で職人としてのキャリアをスタートさせます。最初は多分、見習いというか丁稚みたいな感じだったと思いますけどね。まだ労働法が整備されていない大正期の話ですから。

吉蔵は修練を重ね、二十九歳になる一九三五年に独立。東京に吉田鞄製作所を創立します。これが株式会社吉田の前身です。とはいえ、一九三一年九月の満州事変を機に、血腥い物騒なムードが横溢している時代です。満州を欲望する軍部やその支持者と、日本政府との間には大きなズレや軋みが生じ、犬養毅をはじめとする当時の首相や要人が次々と暗殺されます。やがて三〇年代後半に日中戦争、太平洋戦争へと突入するのですが、一カバン職人だった吉蔵もそれとは無縁ではいられません。彼は二度の徴兵を受けます。

一九四五年の敗戦後、市井のカバン職人に戻った吉蔵は、五〇年に始まった朝鮮戦争に伴う「朝鮮特需」に対応するためでしょうか、翌五一年に事業拡大のため、製作所を株式会社に改組します。

少年期よりカバン職人として生きてきた吉蔵のこだわりは、職人による手作業でカバンを作るということでした。彼のポリシーでもあった「一針入魂」は、今も同社の社是として掲げられています。

一九六〇年代に入ると好景気が本格的に始まり、日本は経済的・文化的発展に歩を進めます。六一年に池田内閣がスタートした「所得倍増計画」はその象徴でもありましょう。五九年には日本で長年使われてきた尺貫法が廃止されて、世界的にも稀なメートル法に替わりました。つまりこの頃から日本人の多くは「漢字はダサい、カタカナや英語じゃなきゃダメだ」と強く思い込み出したということです。それは先進国(欧米諸国)にキャッチアップしようという動機にもなり、なればこそ高度経済成長も実現するのですが、そういう「カタカナ志向」の空気に即してか、吉田社は六二年、初の自社ブランド「ポーター」を設立します。ホテルのカバン運搬係=ポーターに由来する名前です。



PORTER FRAME 2WAY ヘルメットバッグ(黒)
重量:450 g

価格:税込37,400円(2026年5月時点)

このブランドは今でも同社の看板として展開されていますが、先に述べたようにある種の「欧米志向」に基づいていることは想像に難くありません。それはカルビー社のポテトチップスと、やはり同じようなものと言えるのではないでしょうか。

九四年に吉蔵は亡くなり、今では彼の孫が社長の座に就いています。ちなみに現社長の奥方はパフュームのメンバー西脇綾香だったりするのですが、それはそれとして、私は吉田カバンもカルビー同様、曲がり角にあるのではないかなと思っています。

ポーターのカバンはすべて国内で職人の手作業で作られています。ということは、人件費や材料費の高騰などで商品価格が天井知らずに上がることはあっても下がることは(たぶん)ありません。そもそも質の良いモノを作る以上、ある程度以上の値段になるのは仕方がないことです。しかし今は概してインフレ不況で、国内人口も減少するばかりの時代。ポーターのカバンを日用品として買える人の数も、自ずと減少傾向にあると見ていいでしょう。少なくとも国内の日本人に限って言えば。



POTR / CLAN トートバッグ(ターコイズ)
重量:820 g

価格:税込48,400円(2026年5月時点)

こうした傾向がいつまで続くかは分かりません。ただ、このままだとポーターを買うという選択をする人は、おそらく減るばかりです。もっと安く手に入るカバンは他にいくらでもありますし、良質なバッグはポーター以外にもあるわけですから。そういう意味合において私は、「吉田カバンもカルビー同様、曲がり角にあるのではないかな」と思うのです。

吉田カバン ホームページ




 

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