こんにちは。もうすぐ節分ですね。鬼は外、福は内。節分といえば豆まきですが、聞くところによると、北海道で豆まきをする際にまく豆は、落花生なんだそうです。別に千葉県と秘密裡に提携しているとかではないと思うんですが、よく考えたら、落花生のほうが衛生的ではありますよね。まいた後にその豆を食べることを考えたら。
それと、今回取り上げる『のだめカンタービレ』と、どういう関係があるのか? 正直言って、なんの関係もありません。では始めましょうか。
『のだめカンタービレ』は、埼玉県出身の漫画家二ノ宮知子が二〇〇一年から二〇一〇年まで連載していた少女漫画です。連載媒体は講談社の『キス』という女性向け月刊誌。この雑誌は一九九二年から今年(二〇二五)に至るまで毎月発行されてきたわけですが、おそらく同誌の「二十一世紀序盤」を語る上で欠かせない作品、それが『のだめカンタービレ』だと思います。
それくらいヒットしたのか? 単行本のシリーズ累計発行部数は三~四千万部と言われています。大ヒットですよね。でもこの作品が人口に膾炙したのは、漫画だけじゃなくてドラマがヒットしたのも大きかったと思います。後でまた言及しますけど、〇〇年代後半にフジテレビ系列でドラマ化されたんです。
この『のだめカンタービレ』とはどういう物語なのか。
カンタービレとは「歌うように」を意味する音楽用語ですが、この言葉が示すようにこの作品はクラシック音楽をテーマにしています。主人公は、少女漫画の定石通りといいますか、女性です。関東のとある音楽大学に通うピアニスト野田恵を中心に物語は進んでいきます。
『キス』はその誌名が示すように、主に恋愛漫画を扱ってきました。だから野田恵こと「のだめ」にも、恋の相手が登場します。同じ音大に通う千秋真一という男性です。彼はピアノ科に在籍していて、だからピアニストであるのですが、オーケストラの指揮者を志望します。でも彼はいろいろと過去のトラウマに苛まれ、袋小路にはまりこんでいきます。周りの学生ともうまくやれない。そんなある日、千秋は同じマンションに住み、同じ音大の同じピアノ科に籍を置く、福岡県出身の後輩=野田恵に遭遇します。
千秋は、少女漫画に出てくるメイン・キャラクターですから、当然ルックスがいいんですね。だからのだめは(もちろん)フォーリン・ラヴします。千秋ものだめにピアニストとしての豊かな才能を感じ、二人は接近します。とはいえ女性が描く少女漫画ですから、安易に女性を持ち上げたりはしません。〇〇年代当時、巷では「汚ギャル」という言葉が流行りました。部屋や見た目が汚い若い女のことを、そう呼んでいたんですね。のだめはその「汚ギャル」の一種です。清潔感がなく、だらしない。でもピアニストとしては凄いと。
対する千秋は、清潔感があって家事もできます。父親は国際的ピアニスト、母は資産家の令嬢という絵に描いたような(まぁ実際絵に描かれているだけなんですけど)御曹司で、おまけに顔もスタイルもいい。なんというか、「ザッツ少女漫画」なキャラクターです。だからのだめの才能は認めても、異性として好意を寄せるなどはなかなかありません。さぁのだめの恋はどうなる? 千秋は音楽家としてどうなるのか? 物語はこうして幕を開けたのでした。
本作は人気を博し、二〇〇四年に講談社漫画賞の少女部門を受賞。二年後の二〇〇六年十月には、フジテレビ系列でドラマ化されました。のだめは上野樹里に、千秋は玉木宏によって演じられました。二人とも当時二十代でしたから、音大生役にぴったりはまっていたと思います。ドラマは全十一回、平均視聴率約十九パーセント(関東地区)を記録し、〇九年と翌一〇年には前後編の映画も公開されました。のだめといえばこのドラマ版、という人も多いのではないでしょうか。同じ二〇一〇年、原作である漫画のほうも最終回を迎えます。
のだめカンタービレ最終楽章(劇場版)前編(2009)
個人的なことを言いますと、私の『のだめカンタービレ』の入口は、漫画版ではなくてドラマ版でした。だからどうしても「のだめ=若い頃の上野樹里」になる。ドラマ版は面白くて、映画化された際も、当時付き合いがあった奈良県在住の女性と観に行った記憶があります。映画のほうは、ドラマ版と比べ予算や上映時間に余裕があるせいか、全体的に流れが間延びしちゃったかなという印象を受けました。もう少し(ドラマ版のように)きびきびした編集を施して欲しかったというか。
なので、漫画版をレヴューするのは避けたいと思います。だって、どうしても「ドラマ版と比べると」になってしまいますからね。フラットに見れない。