『けっこう仮面』
エロ、ギャグ、アクション、他に何が要る!?
アメリカ映画などにおいては、娯楽の3大要素として「エロ」「ギャグ」「アクション」などが挙げられる。たとえ観る人がどういう境遇の人であろうと、これらの要素は人を(特に男を)「夢中にさせる」のに有効である、というのは確かに想像に難くない。
さて、その娯楽3大要素を、漫画というフィールドで最大限に活かす作家といえば、我らが永井豪をおいて他にいまい。とはいえ、『デビルマン』『バイオレンス・ジャック』など、彼の作品は奥深さを伴うものも多い。
難しいテーマなどいらない、純粋にエロとギャグとアクションを楽しみたい。そんな人には『けっこう仮面』を読んで頂きたい。
舞台は、長野県にあるスパルタ学園という全寮制の進学校。生徒たちは両親や世間から隔離され、勉強を積み重ねる日々を送っていた。そして、学園は進学率強化のために、試験において平均点90点以下の生徒に対して強化指導を行なっていたが、それは実際には性的暴行を加えていただけであった。
この設定だけなら、風刺がある程度効いた漫画で済む。しかし、その後に続くキャラクターがずば抜けているのだ。
学園内で蹂躙(じゅうりん)され続ける生徒たちを救うべく現れたヒロイン。それが「けっこう仮面」なのだ。顔こそマスクで隠してあるものの、身体は全裸のスレンダーな女性。ありえない。男だったら間違いなく変質者として扱われるだろうが、女性ならギリギリでアリというラインに位置するこのヒロイン。
彼女は正体を隠したまま、次々と現れる敵と戦っていく。この敵たちもピリリと効いた演出をもって迎えられる。たとえば、往年の特撮ヒーローに『七色仮面』というのがあったが、本作に登場する敵には「七エロ仮面」なる者がいる。また、永井の師である石ノ森章太郎の代表作に『サイボーグ009』があるが、『けっこう仮面』に登場するのは「裁縫部009」だったり。
ヒロインの必殺技もすごい。全裸の女性が股間をおっぴろげ、敵にジャンピング・アタックをかます。男性である敵は、目を奪われてよけられないというわけだ。色々な意味で恐ろしい技である。
永井曰く「手塚(治虫)先生の絵にエロスを感じる」ということだが、永井が描くタッチの女性もこれまた大変魅惑的であり、そのあたりを活用したキャラクターであるとも言えよう。
この作品から学び取るものは、ない。ただ、面白い。
作品情報
・作者:永井豪
・出版:集英社
・連載期間:1974年8月~1978年1月

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